やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

鼻のエピテーゼ

デジタルブーム

 あくまでも3Dとかデジタルソフトウェアとか手段でしかないと思うのですが、なんかブームみたいなノリの昨今です。

 先日のデンタルショーの間もスマイルデザインガーとか、イントラオーラルスキャナーがーとか、かなり聞かれました。


 使いこなせばもちろん便利ですし、年のせいか色々めんどくさくなってきてるわたしなんかは、このデジタルデバイスとか技術に助けられてます。

・・・と、たまにはエピテーゼ関係の話も書かないといけないかなと思って書いてるだけなんですけどね。

 症例が結構多くなってしまって、お待ちいただいている方も増えてきてしまってる状況。

だんだんと考えることを避けてるのかもしれませんね。

 Screenshot 2023-06-05 at 1.42.01 PM

今朝は歯科の仕事が少し落ち着いていたので、事前準備で CTスキャンのデータを3Dに変換して編集してました。

変換時にデータの範囲を指定すれば、骨の部分だけとか皮膚表面の部分とか選んで変換することができます。

上の写真は皮膚表面と頭蓋骨のデータを重ねています。

Screenshot 2023-06-05 at 1.42.09 PM

皮膚表面のデータだけにするとこんな感じなのですが、耳、鼻の内部まで再現できるのには改めてビックリします。

 ちなみにこの患者さんは今回欠損した鼻のエピテーゼの予定です。

インプラントとアタッチメントを使ったエピテーゼにしたいというご要望なので、事前にCTデータを送ってもらって予定を立てています。

 頭蓋骨のデータから骨の厚みや形状をチェックして、チタンをミリングマシーンで削り出してカスタムメイドのインプラント構造体を作ろうかなと考えています。

Screenshot 2023-06-05 at 1.41.41 PM

人体の神秘を垣間見るような感じですね。

 

カスタマイズされた鼻

 パンデミックやら日本一時帰国やらと、なかなかタイミングが合わずようやく今日会うことができた患者さん。

もうすでに患者さんという呼び方は適切ではないんですけど、未だ他に適切な呼び方が思いつかず・・・


鼻のエピテーゼを作った人です。
フィリピンに来て関わった、思い出深い二人目の患者さん。

当時彼女は12歳。
幼少時の火傷が原因で鼻が欠損しています。

初めて会った時の印象とか、お母さんとの会話などなど未だ懐かしく思い出されます。

近くに住んでいることもあり、時々うちに寄ってエピテーゼのメンテナンスをしたり作り替えをしたり。

今日改めて年齢を聞いたら28歳になったとか。
かれこれ16年のおつきあいになります。

 最後に作り替えてからかなり経っているため、現在使用しているエピテーゼはかなりダメージがありました。

幸い、というか今のマスク社会が都合よかったです。

 今使っているエピテーゼはもう修復して使えるほどの状態でなかったので、新しく作り直すことにします。 

以前の型も残っていないので、現状のエピテーゼをワックスで回復してアルジネートで型どりしました。

そこにワックスを流し込んで複製。

このあと複製したワックスを細かく修正し、通常通り埋没してシリコンを詰めます。 

IMG_1086

写真はワックスに置き換えた状態です。
以前にわたしが作った形よりも結構変わっているんですよね。

普段から自分で色のタッチアップしたりしている彼女、どうやら辺縁とかもキレイにカットして自分好みの形にカスタマイズしているようです。

 エピテーゼ作る側からいうなら辺縁は薄くして、移行的にしなるべく目立たなくするのが通例。

彼女のカスタマイズはそれとは逆方向にいっているところもあるのですが、ちゃんとそれなりに理由があってのことのようです。

接着剤を使うとエピテーゼが傷みやすいのと、何よりエピテーゼ用の接着剤は高価です。
普段使いには両面テープを補助的に使ってあとは伊達メガネで押さえて使っているらしい。

そのメガネをかけたときに境目が見えないギリギリのところを、自分なりに探し出してこの形にたどり着いたようです。

小鼻の脇も薄く辺縁を伸ばしていたはずなのですが、ここもキレイにカットされています。

これを見るとエピテーゼはこちらの意見を押し付けるべきものではなく、何が本人の求めるものなのかを探し出すのが重要なんだと思い知らされます。

同じような条件のエピテーゼでもつける人によって理想が違うため、作る側からの一方的な正解というのは無いようです。

IMG_1087

 

鼻のエピテーゼ キット

IMG_3756

このキットを使ったマニュアル動画を作っているのですが、編集で目が疲れたのでちょっとブログの更新で休憩。

動画の長さはほぼ1時間になりそうです。

Youtubeにあげている動画はいつも20分以内に終わるようにしているので、途中余計なところは早送りしたりして作っています。
・・というのが、わたし自身20分以上の動画は見る気がしなくなるので・・・

今回はこのマニュアル動画もキットの価格に含まれますので、じっくりみっちり工程をのせています。
ちなみにYoutubeに今回の動画はアップしない限定版です。ふふ・・・



 シリコンの作業時間の目安にもなるように、シリコンの練和から型に詰めるところなどはカットと早送り無しで編集しています。

音声はなしで極力動画とテキストでわかるように作っているので、スクリーンショットを作ればそのままe-bookとかプリントして紙のマニュアルにもなるかもしれません。

ということで今日は疲れたので寝ます。

明日また会社で内職として編集つづけます・・・


皮膚の透明度 その後・・

エピテーゼを作るサイクルがいつの間にかだいぶ早くなっています。

例えば耳のエピテーゼで接着剤でつけるタイプなら

1.型どり
2.ワックス試適
3.シリコン試適→ステイン→コーティング

しばらくは3回の患者さんとのミーティングで終わるようにしていました。

以前はワックス試適で2回ほどかかったり、最終難関のシリコンのステインに到達する前にシリコン試適時点で再度ワックスに戻ったりと、5,6回かかるのが常だったように思います。

でも、中には遠方から飛行機に乗ってホテルに宿泊されて、という方も見えるためなるべく回数は減らしたいし、ましてや自分の至らなさで余計に来ていただくのは論外。

ということで手慣れてきたことも大きいのですが、最短3回で済ませるようになってきてました。

ただ・・・・3回目は正直いって疲れます。
ステインから最終の仕上げまで、患者さんにお待ちいただいてやるのはかなりの集中力がいります。

終わったあとは通常バタンキューとしばらく寝てしまうのが通例。

手術後のブラックジャックの高いびきが僭越ながら理解できるこの頃。

しかし最近また見直して、ステイン後の仕上げを急がないようにしました。

というのは、コーティングをする時点でステイン後のエピテーゼシリコンがよく乾燥していないと結果が思わしくありません。

また、患者さんの皮膚の上で最終のステインはしますが、その後また時間を置いてじっくりムラやアラを修正してから仕上げをしたほうが絶対いいですね。

とくに目の疲れが激しいこの頃、この仕上げまでは時間をかけたほうがいいなと。

・・・で、最近のタイムラインとしてはステイン後はいったんお帰りいただく。
その前にシリコンに置き換わったエピテーゼで、装着の練習や説明はしておきます。

近くの人であれば最終のインストールに来ていただいてもいいのですが、とくにコロナ以降事前にラピッドテストしてからじゃないとクリニックに入れなかったり、防護服などの余分な出費が都度かかってしまいます。

そのため仕上げが終わったエピテーゼは、こちらの宅配便みたいなもので送る方法を試しています。

最後の結果を自分の目で見れないのは少々不安でもありますが、インストール後も色のタッチアップやメンテナンスで後日会う機会はあります。

FullSizeRender

そんな長い前置きですが、これもそのうちのひとつです。

色の難しさに、やはり生きているものが相手ですのでどうかすると色合わせをしている段階で色がどんどん変わる場合が多々あります。

とくに若年代で色が明るめの人はちょっとした温度差や、感情の変化で皮膚の色が変わります。

この鼻のエピテーゼの方も23歳女性、色白で例の青みがかった透明感のある肌です。

ステインで色合わせをしている部屋のエアコンが結構強かったので、どんどん肌の色が白くなり反面エピテーゼは赤いまま取り残されていきます。

もうこういうところまで気にしだすときりがないんですけどねぇ・・・

・・・で、結局色の調整をしながら都合8個作ってしまいました。

その中の3個が上の写真で宅配便で送る前のものです。
色味を微妙に変えて作ってあるので、その時の環境で一番近いものを使ってね、と説明しておくりました。

IMG_2123

このエピテーゼを送ったのが昨日でしたが、実はこれを書いている先ほどハプニングがありまして・・・

ちょっと歯の仕事をしながら並行して書いてるので眼が疲れました。
後ほど多分仕切り直しして続きを書きます・・・

待て緊迫の次号!!(少年ジャンプ風)



鼻のエピテーゼ ワックスアップ 3D

前回までの鼻のエピテーゼワックスアップ。
動画をYoutubeにアップしましたので、よろしかったら・・・




動画はいまだ手探りですのでサムネイルなどの様式が一定していません。
見にくかったりわかりにくかったりのご意見歓迎いたします。

顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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