やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

色の道 まだ続いています

相変わらず茶番デミックどっぷりのフィリピンなので、とくに医療関係は色々とめんどくさい。

エピテーゼの問い合わせは多いのですが、緊急を要しないものやお待ちいただけるものは極力待っていただいています。

そんな中でもやはり見た目の回復だけではなく、嚥下とか咀嚼機能の改善回復、患部の保護などなど優先しなければいけない症例もあります。

先日からの3Dを使った鼻のエピテーゼもそういった症例で、ロックダウン以来ひさびさに手掛けた症例になります。

3Dを利用した製作法はおもいのほかうまくいき、明るい材料なのですが問題は色ですね。

やはりこういうものはやり慣れておかないと、ブランクがあると調子が狂います。

色彩感覚やセンスのある人ならいいのですが、そういうのがないわたしのような人間は、常に練習を怠らず同じ失敗をせめて繰り返さないということが大事だと思い知らされます。

今回の症例では久しぶりに冷や汗かきかきの仕事でした。


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写真はステイン途中のものです。

エピテーゼの辺縁は薄く作りますが、その分あとあと退色や変色が激しい部分でもあります。
これは多分皮脂の影響を受けやすいためかなと思っているのですが、それを防ぐためにはやはり基礎色をなるべく最終の色に近づけておくことだと思います。

そう思って2度ほど作り直したエピテーゼが写真のものですが、どうも色が濃すぎるような気がして・・・・

やはり絵でも描いて普段から乏しい色の感覚を鍛えないといけないのかな・・・


鼻のエピテーゼ Seminar

フィリピンに移住して約15年。

エピテーゼの仕事は患者さんとのおつきあいがながーくなります。
特にエピテーゼの技術者は数が少ないようで、選択肢が限られることとやはり使っていただくうちのメンテナンスや修理、作り変えなどがありますのでほぼ終生関係が続くのではという気がします。

今回はだいぶ以前に鼻のエピテーゼを作って差し上げた方が、今度はセミナーの受講生として来られました。

都合10年ほどのおつきあいになりますので、その間メンテや修理などで時々来られていました。

とくに鼻のエピテーゼは使用頻度が高いことと、やはり日差しに晒される機会も多いため、耳などのエピテーゼに比べ若干作り変えの頻度も高くなるような気がします。

軽度の修理やメンテにはなるべく負担を軽くしているのですが、それでも長期に渡ってはそれなりの費用もかかってしまいます。

「今回の方は自分で作れるようになりたい!」とおっしゃるのでセミナーを受講していただくことになりました。

エピテーゼを作るには、やはり使われるご本人が製作することができればある意味理想的ですね。

以前に作った時の石膏型はあるので、シリコンの調色、填入からステイン仕上げまででいいかと思いましたが、ご本人は「最初から作れるようになりたい」とおっしゃいます。

現在使っていただいているエピテーゼも、辺縁の浮きあがりなどが少し気になっていたので型取りからはじめました。
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ワックス原型を作るのはさすがにだいぶ手伝いました。
以前のものが基本形ですが、それでもわたし自身の進歩も少し感じられるところです。

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型取りには以前はアルジネート印象材を使いましたが、今回はラバー印象材のいいやつです。
これだと複数回石膏を流すことができます。

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シリコンを調色して型に詰めます。

この辺は色作りの最初の段階なので、一つの山場といえます。

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重合が終わり型を開いた状態。
少し気泡が見えますが修正可能な範囲。

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余剰部分のシリコンを使ってステインの練習。

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最終的にご自身の顔につけたままで鏡を見ながらステインされてました。

予想外にぴったり色があって、本人さんも大変満足していました。

この後コーティングと仕上げをして、帰りには新しいエピテーゼをつけて帰られました。






旅立つ鼻

エピテーゼを作るこの仕事は、どうしても患者さんとの関係が長くなります。

小学生だった子が、大学卒業して就職しバリバリ仕事をして兄弟を学校にやるようになったり、と見ていて仕事抜きに嬉しくなることが多くあります。

先日は耳のエピテーゼを作った女性。
結婚するということで相手の男性を連れて、結婚式の前に訪ねてきてくれました。

せっかくなので古くなったエピテーゼをメンテナンスし、さらに式用の新しいエピテーゼをプレゼントしました。

後日結婚式の時の写真と、新婚旅行時の写真が送られてきました。

今日は鼻の患者さんが訪ねてきてくれました。

若い男性でバイク事故で鼻を損傷したためエピテーゼを作りましたが、来月は韓国に就職が決まったということで予備の接着剤を求めに来られました。

フィリピンは外国で就労する人が多く、こういった場合長期間色のリタッチやメンテ、修理などができなくなります。

この男性にも古いエピテーゼを修理メンテし、新しいエピテーゼを就職祝いにプレゼントしました。


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こちらが古いエピテーゼですが、やはりところどころ色が剥げてしまっています。
母体のシリコンの色を極力近づけて作ったエピテーゼでしたので、装着した状態だとそれほど目立ちません。

やはり、シリコンの基礎色はなるべくちかづけるのが正解だなと実感した次第。


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リタッチして再コーティングしたものと、新しいエピテーゼ。

新しい方は耐久性を重視して、前のものより丈夫なシリコンで作りました。
その分少し硬くなりましたが、韓国での就労期間が3年ということなのでなんとか持ちこたえてくれればと思います。

こういった場合に備えてエピテーゼを作ったときの型は、なかなか処分することができません。
型が残っていれば同じエピテーゼを作るのはだいぶ楽になります。

私には二人息子がおります。
一人は日本で仕事していますし、下の息子もそろそろあちこちに行っては人様のお世話になることが増えてきました。

お世話していただく人たちに、それぞれお礼というのはなかなかできないので、せめて身近な若い方をなるべく助けてあげることにしています。

そういうことがめぐりめぐる世の中であることを信じてます。


Nostril stent

なんのこっちゃというくらいの普通には見慣れない単語ですが、鼻の形を矯正する目的のものです。

日本では多分赤ちゃんのうちに手術するからだと思いますが、最近見かけなくなった兎唇。
口蓋裂という方があってるのかもしれません。

フィリピンではまだまだ見かけることもありますが、これは日本のような保険制度がないため手術をうけることができない人もいるためかと思います。

今にして思えば、小学校からの同級生にこの状態の友達がいました。

通常は出来合いのシリコン製チューブのサイズを見繕って挿入するのですが、形が抜け落ちやすい形状のため、外に伸ばしたウィングをテープで留めたりとなかなか見た目もよくありません。

鼻の穴の形もやはりこういう症例は左右対称ということも稀ですので、この部分も出来合いのものでは限界が低いようです。


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そんなわけで私のところに送られてきた患者さんのステントを3Dでデザインしています。

ものはごく小さく単純なものなのですが、装着する部分が部分だけにこの形に至るまで結構苦労しています。・・・というかまだこれでも試適してみるまで確証はないのですが・・・


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まだ少年といっていい年頃の患者さんですが、手術の時期が遅かったのか非対称度が強いため右と左のステントの形は変えないといけません。

更にこのあとある程度の期間をかけて形とサイズを変えていき、鼻の形を整えていきます。

まだまだどうなることやらわかりません。

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鼻の埋没 その1

相変わらず場当たり的な仕事の仕方なので、内容につながりの無いときがありますがご容赦のほど。

実際に作業をされている方から質問を頂いたりするので、ごく一部の人にしか役に立たない内容ですがぼちぼちできる範囲で紹介していきます。

シリコンエピテーゼは、ワックス原型を作ってその後シリコンに置き換えていくのですが、その型を作る作業のはじめとして石膏埋没という作業があります。

エピテーゼの出来を左右する大事な作業ですし、いろいろとキーポイントがあります。

言葉より写真、写真より動画のほうがより多くのことが伝えられるようなので、とつとつと動画を始めています。

前回は耳のワックスアップでしたが、今回は鼻の埋没です。
基本的な埋没操作は変わりませんので、参考になる部分があれば幸いです。

顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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