やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

金型

思惑どおり

 結局3Dプリントで作ってもらった金型はいまだ活躍せず・・・

やはりもう少し研磨しないと、きちっと噛み合ってくれないのと、レジンが外れにくい・・・

 明日義眼のセミナーがあるので、その材料というかパーツをあらかじめ作っておこうと、CNCでの金型のテストも兼ねてラボの仕事はそっちのけでやってました。

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やはり金型がしっかりできてると心なしかレジンの透明度も上がるような気がする。


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バリの部分もごく薄いし、真円がきれいに出ているので研磨もほんのちょってですみます。

 この金型の構想は結構長くて、デザインしては修正、修正をくりかえしかなり煮詰めたデザインと思ってます。

 なにが思惑だったかというと、いろんな作り方に対応できるように欲張りました。

そのため結局5つのパーツとなってしまい、デザインソフト上でシミュレーションするのに頭がこんがらがってしまいました。

 いざ作り始めてみると、それなりになんとなく組み合わせも覚えるようになりました。


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 作れるパーツはクリアボタン単体、ブラックディスク単体、それとブラックディスクに着色した後にクリアボタンを融合させつつ重合する方法の3つです。

 ブラックディスクも解剖学的な形に近くなるようにと真っ平ではなくちょっとドーム状。

瞳孔の部分も後加工しやすいように窪みもできるようにしています。


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治具に両面テープで貼り付けてマイクロモーターを使ったなんちゃって旋盤加工。

バリが薄いのでほぼ手間要らずです。

ディスクの厚みや形を調整しつつ瞳孔も最終的な大きさに調整。


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こうしてできたブラックディスクを単体で色付けして、クリアボタンと合体させる方法は通法どおりです。

今回この金型に盛り込んだのは、ブラックディスクに色付けして金型に戻し、クリアボタンの重合時に融合させてしまう方法。

この方法にこだわったのは、歩留まりがいいから・・・

 後から貼り合わせる方法だと、センターがずれたり、何より合わせ目に気泡が出たりして後からガッカリすることが多かったんです。

前に作った金型でもこれをやりたかったのですが、微妙にサイズが合ってなくてしっくりいきませんでした。

今回の金型ではこのサイズ合わせと、金型からの外しやすさに重点を置いてデザインしました。

・・・で


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このように内側の窪みにフィットする訳です。


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あとはクリアボタン部分を重合して融合させた時にどうなるのか・・・

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これが重合終わった状態です。

後ろのステム側から押し出して型から外します。

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写真ではホコリがついていますが、内面に気泡もなくきれいに仕上がりました。

ぐふふ・・・思惑どおりでした。

問題は型の精度が良すぎて、一部レジン重合後に開きにくい部分があります。

 ミリング加工してもらった後に、やはり最終的な研磨は手でやった方がいいようですね。

・・・って、いっぱしの金型職人みたいなことを言い出してます。



ついにきた!

 最近Youtuber のようなキャッチーなタイトルが多くなってきました。
たんに嬉しさの表現です。

 Youtubeといえば、よく話題の新製品が出ると開封動画というのがたくさん出てきませんか?

製品の情報を知りたいときなんかはよく見るのですが、冒頭のしゃべりと開封する部分はいつもすっ飛ばしてます。

「そんなとこ興味ねーよ」というスタンスですが、今日、例のアレが届いて開封動画を撮りたくなる気持ちがわかりました。

 今日は歯のほうのセミナーに参加させてもらう側として朝からセミナー会場に行ってました。

Fedexのメールなんかで、今日配達に来るのはわかっていたのでそっちにばかり気が行ってましたけど・・・

 セミナーの途中見覚えのない番号から着信。
こういう時はたいがい配達の方からの連絡です。

セミナー抜け出して電話に応答、あいにく家人もみんな出払っていたので、建物の受付で受け取ってもらうように手配しました。

 あとはセミナーが終わるのを待つばかりです。

夕方無事セミナーが終わると、速攻で帰ってきました。

・・・・届いていたものは・・・そう


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これですたい。

ステンレスで3Dプリントしてもらったやつ。
クリアボタンとかの金型と、義眼重合用のフラスコ。もう一個は息子のプロジェクトです。

 同じデータで金型の方はCNC加工してもらっていますが、こちらは加工に時間がかかるようで、届くのにもう数日かかりそう。

3Dプリントがどの程度の面のきれいさで上がってくるのかがいちばんの興味でした。


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思ったよりずいぶんきれいです。

フラスコはこのまま使えるレベルですね。
ただ、石膏の型離れが良くなるように研磨しますけど。


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レジンでプリントしたものは若干のカタツキがあります。
これは少し遊びを持たせとかないと上下を開くのが大変になるからですが、ちょっと遊びが大きかったかな・・・という感じでした。

でもステンレスでプリントしてもらったのは、その遊びがいい具合になってたみたいで緩すぎもせずきつすぎもせず絶妙の仕上がりです。


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金型の方は微調整が必要ですが、こちらは鏡面研磨しないといけない部分もあるし、結構遊びは小さくしているので良い具合でしょうか。


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この面はクリアボタンになるところなので研磨が必要です。


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ブラックディスクを作る部分は逆にきれいに研磨しすぎない方がいい塩梅かも。


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クランプを使わずにボルトとナットで締められるようにしているのですが、ナットがちょっときつすぎますね。

こんなこともあろうかと6角の穴ではなくやすりで調整できるデザインにしといてよかった。


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反対側とボルトの穴はバッチリ。
通常のボルトではなくチョウネジみたいに手で締められるのがいいなと思案中。


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フラスコはもう少し肉薄でもよかったかもですね。
結構ずっしり感があるし、ステンレスという材質ならちょっとオーバースペック的な肉厚です。

底の部分も面取りを忘れず石膏を外しやすくする抜かりのなさはちょっと褒めて欲しいところ・・・

来週はラボに行って仕事そっちのけで研磨します。

年初の思いつき

 今日は朝からクリニックに立ち合い、そのあとイミグレーションに行って毎年の恒例行事ですが、外国人登録証の更新とかしてきました。


 あいかわらずイミグレーションはごった返しているし、お役所仕事というのかあちこち行かされて時間ばかりかかります。

 まぁ、やらんとしょうがないしねこればっかりは・・・

そんなこんなでラボに出勤したのは午後になってから。

特に急ぎの仕事もないので、昨日の続きで義眼用の金型デザインをいじってます。

 3セット一緒に作れるように金型をデザインしたのですが、ここまできたら真ん中にボルトを通してナットで締めればクランプいらないんじゃね?ということに思いつきました。


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位置をずらして一部断面にしてるしわかりづらいですが、真ん中に穴をあけてます。

ちなみに一個の断面だとこんな感じ。


Screenshot 2024-01-03 at 10.18.56 AM

4個のピースから構成されていますが、上から1、2、3、4とした場合。
この組み合わせならクリアボタンとブラックディスクが別体で作れます。

1と2だけでブラックディスクを作り、ブラックディスクをつけたまま3の下に2を置いてクリアボタンを重合すればブラックディスクと一体でクリアボタンが出来上がります。

 たぶん・・・かなり煮詰められてるはず・・・


1セットだけのものなら旋盤加工で作れますが、合体型はCNCか3Dプリントじゃないと作れませんね。

外注でCNC加工してくれるところがあるので、そこで作ってもらおうかと見積もり取りました。

複数個頼めば若干ですが1セットあたりのコストが安くなりますが、誰かいる人いますか?

ニッチな世界なんでおらんでしょうね。

 必要な人にはものすごく欲しがられるんですけどね・・・


年始の仕事

 昨日1月2日からラボの仕事は始まっていて、のっけから立ち合いでした。

今日まだ松の内ですがフィリピンは平常運転。
・・・といってもまだ忙しくないので、眠くならないようにパソコンで作業しています。

 義眼用のクリアボタンとブラックディスクを作る金型をちと改良。

結構煮詰まってきてはいるのですが、いくつか改良する点がありまして・・・

 セミナーでそのまま置いてきたり、別の技術者の方にプレゼントしたりで、結局今手元に残っているのはチタンで削り出した一番新しいデザインのもの。

 しばらく使って見つけた改良点なぞを織り込みながら新しくデザインしています。


Screenshot 2024-01-03 at 10.18.56 AM

おもな変更点はブラックディスクの形。
なるべく後作業が楽なように瞳孔のくぼみもあらかじめできるようにと、あと型から外しにくいのでその部分を改良しました。

 そういえば義眼製作の手順も以前とはだいぶ変わってます。

以前はクリアボタンとブラックディスクを別に作って、虹彩を描いてから合体させていました。

これだとちと歩留が悪く、完成後に張り合わせ面に微細な気泡が見つかったり・・・

 たぶん多くの技術者さんがやられている方法に近いのだと思いますが、ブラックディスクを先に作り、クリアボタンを作るのと同時に合体するのが無難だなと。

その方法でもいけるし、別体で作ることもできるように金型はデザインしました。

図だけ見てもなかなかわかりづらいと思います、自分でもときどき組み合わせにまごまごするくらいです。

部品の順番を変えたりして使うので、あとで横に番号でも振っとこうか・・・


 もう一点しばらく使って気になっていたのが、クランプで挟む時にどうしても傾くことがあって、厚みが均一にならなかったりしてました。

重合後に修正は可能なのですが、できればそういう手間も省きたいなと。

しばらく方法を考えていたのですが、単純に複数個同時に作れる金型だったら安定するだろうという結論。


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3セット同時に作れるように合体バージョンもデザインしました。

これで一旦3Dプリントしてモックアップ作りチェックしてみようか。


義眼の金型

 いつの間にか義眼はどこへ、という日々ですが、ちゃんと症例こなしてます。

今日はラボ勤務ですが、午後そんなに忙しくないので眠い🥱・・・・ 

水曜日に義眼のインストール予定があるので、その準備をしておかねばと。

 最近チタンで削り出した金型ですが、その後デザインに微調整を入れています。

調整後のデータで削り出しはしていないので、とりあえず手作業で既存の金型に反映させてみました。

そのテストも兼ねて、義眼用のパーツを作ります。

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昔の金型も使って2個ずつ作ってみましたが、なかなかツボ。

ブラックディスクを先に用意して、クリアボタンの部分を重合するのと一緒にブラックディスクを合体させます。

色々作り方はあるのですが、以前はずっとクリアボタンとブラックディスクをそれぞれ作り、虹彩の色付けが終わってから貼り合わせていました。

この方法の良さもあるのですが、難点もあって・・・合わせ目に微細な気泡が入りやすいこと・・・

よく見ないとわからないレベルではあるのですが、やはり気になります。

今日のやり方だとその気泡の心配は皆無。

マイクロスコープで確認してもバッチリでした。

 金型の精度も上がっているのでバリ取りも一瞬で済んでしまうし、クリアボタン部分のレジンもごく少量なため重合収縮もほとんどなし。

以前の苦労はなんだったんだという感じです。

やはりちゃんとした材料とか道具は必要なんですね。

・・・という与太話でした

 そうそう、この金型も例の通販で紹介できればなと思い、量産を目指して色々と見積もりを取ってみました。

 日本の会社にも問い合わせしましたが、とてもじゃない金額が出てきました。

金属による3Dプリントが無難かなと思っていながらも、形状的には旋盤加工向きなはずと素人考えで見積もりをお願いしてみましたが、3Dプリントの方が安くつくようです。

3Dプリントだと部分的に研磨しないといけないので、面倒かなと思っていましたがやむなしか・・・


その前にどんだけ需要があるんだよってはなしですけどね
 
顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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