やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

シリコン印象

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写真は指の型どりをシリコン印象材でおこなって、石膏を流したところです。

色が違うのはとくに意味があるわけではなく、残り少ないカートリッジのものを使い切ろうと・・・
結局緑のやつが途中でなくなって、青のやつで追加したという感じです。

黄色のやつもシリコンですが、いずれも口腔内で使うシリコンでドイツ製の結構いいやつ。

こういう使い方するのにはもったいないのですが、材料屋さんにお友達がいるもんで、デモ用のやつとか時々もらうので使えてます。

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こういうディスペンサーにカートリッジとノズルを付けて使いますので、アシスタントがいなくても一人でちょいちょいと型どりできます。

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口腔内の濡れた状況の中で使うもののため、そのまま乾いた皮膚に塗布すると後で外すのが大変になります。

事前にワセリンとか薄く塗っとかないといけません。

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石膏が固まって外したもの。

左の指は正常側でこちらを参考に、欠損部を作ります。 

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さすがにシリコン印象は細部まで再現されていますし、気泡とかもほとんど入っていません。

少し指がまっすぐになりすぎていますが、指の型をとるときには自然なポジションとカーブでとらないといけません。

普通にやると患者さんは指をピンと伸ばしがちです。

ピンと伸ばした形でエピテーゼが出来上がってしまうと、普段つけているときにその指だけ妙に目立ってしまいます。

ポケットやかばんに手を突っ込むときにも引っかかりやすくなります。

 アルジネート印象材のほうが格段に安価なのですが、とくに指の場合はわたしはシリコン印象材を使います。

このあとの製作上の利点が大きいということもありますが、その前に型どりの時点で自然なカーブで取りやすくなるためシリコン印象材がやはり向いていますね。

製作上の利点というのは、このあともう一度型に石膏を流し込んだりするためです。

アルジネートでも型を壊さないように気をつければ、もう一度石膏流し込んだりはできるのですが、やはり乾燥などで変形します。

指紋なんかの微細な性状もだんだん失われていきます。
アルジネートであらかじめ複数型どりしておくという方法か、石膏に置き換わった指を型どりする方法とかもあります。

わたしの場合はそんなことがめんどくさいのでシリコン印象材を使っています。

写真のものは歯科用のものですので少し高価です。
もっと広範囲の印象で材料がたくさんいるときなどはサクラオリジナルシリコンを使います。

 

ただ、この動画のときにはワセリンを塗っておくのを忘れて、はずすときにちょっと苦労しました。

 手で塗りつけるよりもやはりディスペンサーでやるほうがスマートですね。

 

指のプロジェクト

たまにはエピテーゼ関係の話でも、と思いながらしばらく3Dデザインにハマっていたのと、何により今は患者さんの受け入れができない状態です。

ちょっとある思いつきを形にしてみようと、今日は久しぶりにシリコンを触っています。


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写真の赤いのはまだワックスですが、指ですね。

指のワックスアップは表面性状がかなり細かいので、その状態を作り上げつつ潰れてしまわないように維持するのに結構気を使います。


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手に持っているのは本来回転工具の先につけて研磨に使うブラシです。
歯科技工士さんが使う道具ですね。

このブラシはいろいろ種類があるのですが、写真のものは結構硬く皮膚の表面性状をつけるのに結構やりやすいです。

歯ブラシだと毛先が柔らかすぎなので・・・


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まだこのプロジェクトは進行形ですので、また形になりましたらお見せできるかも。


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また、例によって3Dデザインとプリントの話を少しだけ。

写真右は歯科医院によばれたときに持っていく研磨道具のセット。
入れ歯の調整からインプラントクラウンなどの調整に使う自分なりに厳選したセットですね。

これをずっと温めていたデザインでようやく作ってみる事ができました。

それが写真左です。

道具を挿す穴を3列にしてたくさん開けたので、立体的にもっと収納できるかなと。
さらに挿した部分が90度回転して上向きになるので、道具を選びやすくなるだろう、という目論見でした。


・・・でした、というのは、期待ほどでもなかったから・・・?

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今までのキットの内容物を移動させてみましたが、逆に全部入りきらない。
しかも密集し過ぎていて取り出しにくそうな気もする・・


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土台は例のミント缶に接着してしまいます。
本体を90度寝かせて収納状態にしたところです。

蓋の部分に入りきらなかった道具たちが・・・

たぶん工夫すれば入らないこともないのですが、黄色のバフはやはり場所を取り過ぎます。

そのほかのはシャフトの部分がほかのものより少し長くて、土台に挿すと引っかかって収納状態にできなくなります。

シャフトの部分を切って少し短くしてもいいのですが、意外に収納数が増えなかったことと取り出しにくそうなんでもうちょっと考えてからにします。


ではでは

硬いシリコン

最近いろんなところから材料の提供というか、使ってみてオファーが来ます。
通常5種類の硬さのシリコンをエピテーゼによって使い分けています。

耳の場合👂硬いシリコンだとシャツを脱いだりする時にひっかかるとすぐにとれてしまったり、でも接着剤による付きは硬い方がいいというフィードバックもあります。

鼻の場合👃、実はよく動く部位なので柔らかいシリコンじゃないと外れやすくなると言われました。

思えば以前より柔らかめのシリコンを使うようになっていました。

指も👆ある程度触り心地の良い物をと、柔らかめに調合したシリコンを使っていましたが、指はやはり耐久性を重視しないといけません。

症例の多くは事故で切断されたものが多く、関節部はそのままの大きさで残っている場合がほとんどです。

この上にエピテーゼをかぶせることになりますから当然その分大きくなってしまいます。

ここは硬くても丈夫なシリコンでなるべく薄く作らないといけません。

....と、あれこれ考えながら硬めのシリコンを久しぶりに使うと、今まで忘れていたことが.....

硬いシリコンの方がステインの吸収がいいような気がします。

それにコーティングをしても、今まで何となくベタつきが残っていたのがけっこうすっきりさらさら。

やはり柔らかめのシリコンはしっとりしてる分何かオイル成分みたいなものが多いような感じですね。

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5歳の子供の指です。
触り心地からいくと柔らかいシリコンを使いたいところですが、あえて硬いシリコンで作りました。

装着して様子を見ていたら、その指で紙をなぞったりして遊んでいました。

さいわいベース色をギリギリまで近づけていたので大丈夫ですが、以前のように外部ステインに頼った着色だと一発で色が剥げてしまいますね。

この面でもやはり指は硬いシリコンが必須みたいです。

メーカーから提供してもらった時は、この硬さはいらんな、と思いましたがいまではけっこう活躍してくれてます。

近々オリジナルシリコンも要望に合わせて提供できるようになりそうです。




結局.....

指の埋没でしばらく新しい方法を試みましたが、結局また元に戻っています。

新しい方法はそれはそれで使い道はあるかなと。

今回の指2本のケースは従来の埋没法にて製作中。

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シリコンの重合が終わって型を開いたばかりのところです。

ちょっと今回は慎重にすすめたせいか、型の精度が良かったらしくバリもごく薄くハサミを使うまでもなくカッターナイフでソリソリと撫でるだけで綺麗に取れていきました。

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指のエピテーゼ シリコンのバリ取り

様々な試行錯誤と新たな試みの末、なんとか納得できる状態にまで持っていくことができました。

新しいアイデアの部分はまだ秘密ですが、合わせ目のバリ(余剰の部分)がごく薄く最小限になります。

ハサミで切り取るというより、カミソリで削いでいくだけできれいになります。




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この写真は新方式の型から外してバリを剃り落とした状態で、この後ステインとコーティングで完成です。

母体のシリコンの色もギリギリまで近づけており、キャラクタライズもシリコンを充填する段階で済ませていますのでステインも最小限ですむはずです。

もちろん表面が擦れて下地の色が出ても目立たないはず。

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これからステインします。




顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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