やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

ステイン

白が来ました・・・が・・・

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 日本行きがだんだんと近づいて来て、荷物のトラッキングをヒヤヒヤしながらやってました。

トラッキングラベルは発行したけれど、配達日はまだ未定、と出て来て変わらず。

そろそろあきらめムードになって来てましたが、トラッキングサイトはアップデートされないままいきなり配達に来るのもしょっちゅうなので、一縷の望みをかけてました。

・・・したら今日の午後、案の定というか知らない電話番号からの着信。

出たら、「今配達に来てるんですけど〜」・・・・やっぱりかい。

自宅の方に配達されているので嫁さんに急いで電話して受け取ってもらいました。

先に届いたのはステインの方。
これで四色揃いました。

待望の白はわたし爪の色を作る時にしか使いませんが、以前色々と材料が揃わなかった頃は肌の色を作る基礎色がなかったので、頑張って作っていました。

この時には白は必須。

基本的に白と赤でピンクを作り、そこに黄色と青色を微量添加して肌の色を作っていました。

この白色を探すのも結構時間がかかって、絵を描く人なら通じるのかと思いますが、チタンホワイトじゃなくてジンクホワイトがいい、という結論になりました。

今回のオリジナルステインもそのジンクホワイトを踏襲しています。

 もうひとつ到着を持っている荷物があって、そっちはシリコンの会社からのもの。

メールで担当の方に問い合わせたら、今日か明日には届く予定だと。

そして夕方、また見知らぬ番号からの着信。「キターーーーー!」状態でした。

 今日に限ってラボで少し残業、といっても義眼の内職だったのですが、最後の研磨はやはりラボでやるのが一番。

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・・・で、義眼も無事仕上げて帰宅。

夕飯もそこそこに早速箱を開けました。

少しシリコンが漏れてベタついているのはいつものこと・・・

内容物を確認すると、「ん?」

今回は2種類のシリコンを10kgずつ注文したのですが、一つ間違えて発送されてます。

ショア10とショア35を注文したはずが、35ともうひとつは乳房用に開発している方が送られて来ています。

乳房用も次のオーダーでとる予定だったので無駄にはならないのですが、ショア10がもうほぼ在庫なし・・・

日本から頂いている注文分で後がない・・・

もうしょうがないですね。

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入れ物はこんな感じで、A B 400gずつで1セット。

まあ、ご希望があれば日本から戻って来てからの発送となってしまいます。

 あと、欲しい方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、自分用も含めてシェードガイド用のパレット二種もいくつかプリントしました。

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艶消しの材料で作ったシェードガイドをつくるパレット。

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厚めの名刺入れに3枚入る厚みです。

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こちらはシェードガイドを入れて色合わせ時に使うホルダー。
シルキーホワイトで作っています。

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こちらはパレットだけなら4枚名刺入れに入りますが、シャードガイド付きだと3枚までですね。

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右が縁ありのパレット、左側が縁無しのホルダーです。 

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わたしはよく使う色と基礎色を紙に塗ったガイドを入れて使っています。

いちおう今回用意できる材料の値段は下記のとおりです。
もう準備する時間が限られていますので、もしかしたらご要望に添えないものもあるかもしれません。

ご入用のものがありましたらご連絡くださいませ。

1:シリコン ショア35 800gセット 5千円

2:ステイン 1個 1500円

3:パレットまたはホルダー 1枚 150円

以上です。

在庫があり今回日本に持参して日本から発送できるものは、宅配便の着払いで発送いたします。
お支払いはわたしの日本の銀行口座宛の振り込みですので、海外送金とかの面倒はご心配ありません。



白はまだか

 日本行きが近づいてきているのに、まだ荷物が届かない・・・・

シリコンとステインの追加分を待っているのにヤキモキさせられますね。

トラッキングしても変化なし・・・このトラッキングもあまり当てにならず、いきなり配達されてきたりします。


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赤青黄は揃ったのですが、爪の色にはやはり白が欲しいので追加で注文しています。

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容器はこういうかわいらしいものを用意しました。

これでもかなーりの間使えるはず。
わたしが使うレベルでも軽く4、5年は使えると思います。

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あとはひさしぶりの出番、鼻のモールドです。

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3Dプリント製ですが、石膏に限りなく近いマットな材質を探し出しました。

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それでも一部紙やすりかけた方が良いですね。

 このマットな素材でシェードガイドを作るトレーも今プリント中。

シェードガイドは艶ありと艶なしの両面があった方が便利ですので・・・

 本日はちょこっと経過報告だけです。 

歯のステイン

たまには歯のはなしでも。

歯のステインと書くとなんか歯についたタバコのヤニとかイメージされるかも?

 疲れるのでなるべくやめる方向に働いているのですが、デンタルクリニックによばれることがあります。

日本で技工の仕事してた時も、そういえば ”立ち会い” とかいってましたね。

患者さんの歯の色を合わせたり、形態を調整したりなんかします。

 普段技工士さんというのは患者さんを見ずに、石膏模型を相手に歯や入れ歯を作るのですが、この変はエピテーゼの仕事と大きく違うところかも。

やはり患者さんを実際に見ながら作るのが理想なんでしょうけれど、コミュ障のわたしはもともと人と接するのが苦手で技工士という仕事を選んだのでした。


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行ってきたのはこのクリニック。
たぶんフィリピンじゃ有名どころのはず。

芸能人なんかがよく行くところなので、必然そういう要求の厳しい患者さんなんかが多くくるみたいです。

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たぶん日本では今は珍しいのかも・・・
院内に技工所的なスペースがあって、ポーセレンファーネスというセラミックスを焼く窯もあります。

上の写真奥に写っているのがそれですね。

 今回はジルコニア製の歯の微調整と色合わせ。
色合わせといっても前歯から奥にかけて10本分ですので、比較的色に関しては楽な仕事です。

ポーセレンファーネスはあってもセラミックスとか歯用のステインは置いてないので、自前で持っていきました。

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エピテーゼのステイン用に作ったパレットが一個余っていたので、それを流用。
無駄に凝って作ったのが役にたってよかったよかった。

筆はお絵描き用のトラベルブラシです。
 

夏休みの宿題とシリコンの色

フィリピンにいると季節感が乏しいので、日本と結構感覚がずれたりします。

もう夏休みはとっくに終わってますよね。

子供の頃の夏休みの宿題の取り組み方で、そのひとの性格がある程度わかるような気がしませんか?

早めに終わらせてあとはゆっくりするタイプ、毎日コツコツ消化していくタイプ。
わたしはもちろんめんどくさいことは後回しにして、終盤に泣きを見るタイプでした。しかも懲りずに毎年・・・

この宿題とエピテーゼの何が関係があるかというと、エピテーゼの色合わせでいつもこの夏休みの宿題をひそかに思い出す自分がいます。

型どりをする時点でよく皮膚の色を記録して、シリコンを詰めるときの基礎色をもっとあわせておけばあとから苦労しないのに。

しばらく前までは基礎色は明るめにしておいて、あとから表面のステインでなんとかつじつまを合わせていました。

世間をみるに、多くの技術者が同じような方法をとっているので、いまだに正解が何なのかはわかりませんけど・・・・

ただ、装着してしばらく使っていただいたエピテーゼをみると、脱色や褪色、擦れなんかで表面の色が剥がれて目をあてられないことが多くあります。 

とくに指とか乳房などはそういう過酷な状況にあるわけでなおさら。

そんな経験から、やはり夏休みの宿題同様、あとまわしにしとくと後悔することが多いのかなと・・・

基礎色を適当に明るくしておくと、後でステインのときに時間がかかるし冷や汗もでます。
色を塗り重ねていくとだんだんムラになって汚くなるし・・・

 この歳になって夏休みの宿題はあとまわしにしちゃだめなんだと気づきました。

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最近は水彩絵の具もほとんど使わなくなり、写真上段の白いトレー2つ。
これをたくさん3Dプリントして、都度調色したシリコンのあまりを保存しています。

このシリコン片で近い色のものを選ぶのが確実なような気がしてます。

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指の場合はおもてと裏をこんな感じで一番近いものと一緒に写真を撮ります。

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写真のシリコン片は厳密にはちょっと色があっていません。
こうやって黒のマスクで覆うとよくわかりますね。

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爪の部分は自分の爪の色に近かったので、一緒に写し込みました。

 型にシリコンを詰めるときに、このシリコン片とかに合わせてシリコンをミックスします。

水彩絵の具とかの色見本と違って、実際のシリコン色見本なのでかなり近づけることができます。
とくにシリコンは皮膚と並べて写真を撮ると、シリコンの色が違って見えることが多いです。

これがどうしてそうなるのかいまだにわからないのですが、肉眼ではあっていても写真に撮ると違って見えることがほとんど。

もしかしたらスマホのカメラには何かの補正というか限界があるのかな?

ともあれ、そんなこんなで最近はこういう方法で色合わせをしています。

・・・・で、型から外していざステインという状態がこんな感じです。

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もちろん思惑が外れたときには色がついているだけにリカバーがきついですが、この程度まで色があっていればほとんどステインも薄化粧程度ですみます。

血管が透けて見えている部分の青みとか、爪周辺やシワの部分の濃いところ、爪の色の微調整だけですみます。

あとはコーティングして、最終的に皮膚の艶のあるとこないとこ、など合わせていけば大丈夫な気がします。

もちろん白い画用紙に茶色の指を描くのにくらべ、茶色の画用紙に茶色の指を描くのではややこしい部分があります。

色をのせていくと明度はどんどん下がっていくことになりますが、下がった明度を上げることは基本できません。

基礎色が外れているとそこからのリカバーはかなり大変、というかほぼやり直したほうが早いですね。

まあ、いまのところほぼほぼ色が合うようになってるので、夏休みの最終日も余裕で迎えられるような状態でしょうか。

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10分程度のステイン作業ですがあ、結構近づいたとおもいます。

いまの流れでは、このステインが終わった指をもとに、最終のシリコンの色合わせをしてから型に新たに詰め直します。

その他エピテーゼの適合具合や、つけたときの形や曲がりなどなど、ワックスパターンから調整し直すことも。

今回のこの指も外側の凹みが少し気になるので、ワックスから調整し直します。

 そんなこんな脳みそに脂汗にじませながら作るエピテーゼ。
しばらく使っていただいても色落ちしないよう、とか様々なことを考えています。

手を振ってもスっぽ抜けないような工夫もされているんですが、一般の方にはそういう苦労はわかってもらえないですよね。

「なんで指一本がそんなに高いんだ?メキシコではもっと安いぞ」とかいわれるときがあります。

それにたいしては「はぁ、そうですか」としかいえないですね。

そこそこのもので安いものがあってもいいとおもいますが、無理して技術的なことまで説明してわかってもらおうというのはやってません。はは







 

基礎色とステイン

色というのは伝えるのが難しいですよね。

ずっとメーカーさんとやり取りしていて、この色を伝えるのがいつも難しいと感じてます。
わたしのインスタとか見て、ありがたいことに外国からエピテーゼの依頼が来たりするのですが、型どりと色合わせができないということでいつもお断りしてます。


 Pantone numberという言葉で検索すると、カラーチャートがたくさん出てくるサイトがあります。

この中で必要な色を選んで番号を伝えれば、先方と共有できるということになりますが、その前にパソコンの画面で表示される色が実際のものと違うし・・・

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写真はシリコンに練り込んで基礎色をつくるものなのですが、右側のものは長年使っていて慣れ親しんだもの。

在庫が少しになってきたので別のメーカーさんに注文してみたところ、届いたのが左側のやつ。

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紙に塗ったところがコレです。

このときはあまりにも濃すぎると思って、そのまま使わずに封印してしまいました。

最近シリコンのテストをするときに、もったいないのでこの封印を解いて使ってみたら意外にイイ!

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テストで自分の手をコピーしたものなんですが、この基礎色しか混ぜてないのに結構色あってますよね?


いきなりスタメン入りとなりました。😁

 いま基礎色とステインのオリジナルをメーカーさんに頼んで作ってもらっています。

結構材料のお問い合わせをいただくことが多くなってきたので、出来上がってきたらまた最終のテストをして販売もしていこうかなと思っています。

アメリカの材料屋さんとかのものだと基礎色のセットで20色くらいあったり、ステインも同じくらいあったりします。

ステインの場合はシリコンに練り込むものと表面のステインに使うもので別だったり・・・
単品で必要な色を選ぶことができる方ならいいでしょうけど、そうでなければ高いセットを買わないといけない?それはなかなかハードル高いですよね。

いま開発中のサクラオリジナルはたぶん基礎色で2,3色、ステインはシリコンに練り込むものと表面に使うもの共用できるもので、コレはたぶん3原色と白くらいになる予定。

この組み合わせでほぼほぼどういった色でも出せますので、これで慣れるとどこにいってもどの材料でもしごとできるようになる・・・・はず。


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そういえばうちの息子はわたしのシリコンと材料を使ってこんな物作っています。
いつの間にかシリコンの扱いと色の作り方習得してますね。

このシリコンと色素もサクラオリジナルです。

Fusion360というCADソフトで型をデザインして3Dプリント。
その型に色付けしたシリコンを流し込んで作っています。



 
 
顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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