やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

シリコン

噂の通販サイト

 材料についてのお問い合わせをいただくことが多くなってきました。

うわさの通販サイトは遅々として進みませんが、そういえば9月に日本に行きます。

普段マニラから日本に個別に発送するのは難しかったり、材料によっては書類が必要だったりで、運び屋さんに頼みにくいものもあります。

 
今回日本に行くときにそんなに多くは持って行けませんが、ご要望があれば持って行って日本についてから発送できるかなと考えています。


といってもあまり製品の種類は多くないですが・・・

多分後日改めて紹介するかもしれませんが、メインの材料はシリコンとシリコン用の色素ですね。

そうはいいながらシリコンは先日20kg届いたのがもうすでにSold outで追加注文入れています。

日本に旅立つ前までに届くのかハラハラしてます。

 シリコンの内容としてはわたしがメーカーさんにウザがられながら色々と要望を出してようやく形になったものです。

ショア硬さで10と35。
10は柔らかいので耳、鼻、眼窩など幅広く使えます。

指とか手足のように強度が必要なものは35。

両方とも操作時間が約10分で重合時間が室温25度で約40分、という仕事の早いシリコンです。

特筆すべき点は両方とも最終のコーティングにも使えます。

10でエピテーゼ母体を作って、コーティングは35で部分的に強度を持たせたりできます。

また、10と35を混ぜることで中間の硬さも作り出せます。

 最近やって結果が良かったのは指のエピテーゼ。

残っている指の部分が極端に短く、通常ならバンドみたいなものを延長するしか無いかと思いました。

でも患者さんの希望でなるべく目立たないようにしたいということでしたので、ダメもとで吸着維持に挑戦しました。

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やはり普段その指を使えないせいか太さもふとくなってブヨブヨしています。

エピテーゼの根本部分を思い切ってすぼまるように作って、シュポッと吸い付いてくれることを頭の中で何度もシミュレーションしながら作りました。

このかた例のセブの方なので、やり直しがきかないし実際に装着してみるまでは結構ドキドキでした。

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ホテルの部屋で最終の仕上げをしている時の写真です。

ここまですぼませるとかなり柔らかいシリコンじゃないと開いて装着するだけの伸びが得られません。

母体は10の柔らかいシリコンで作り、内面のコーティングは35で辺縁まで強度を持たせました。

指の外側全体は10でコーティングと、見た目では全然伝わらない努力の結晶でした。

 結果は装着に慣れるまで手間取りますが、つけてしまえばピッタリ張り付いてくれました。

その後、何も連絡がないのでうまく役立ってくれていることと思います。

・・・・・・と、また横道の話が長くなりました。
というような使い方ができる🌸サクラオリジナルシリコンです。

肝心の値段ですが A :B =1:1で使うシリコンで、ABそれぞれ400gで合計800gのセット5千円です。

あとシリコンの内部と外部に使えるようにデザインした色素が🌸サクラオリジナルのメイン商品です。

色素についてはまた後ほど・・・・今日の仕事に戻らねば
 

シリコンが減る問題

コロナ以来むすこもオンラインクラスとかでずっと家にいる。

みんな家でなにをしているのかと老婆心ながら心配になりますね。

うちの息子も一日のスケジュールが不規則ではありながら、なんか工作のようなことをしているので暇を持て余しているというほどではないみたい。

わたしと違う部門の3Dデザインとか得意なので、いずれお互い教え合うこともできるのではとおもっています。

おもに硬い系のデザインとかが多かったのですが、最近は3Dデザインしたものをプリントして何やかやと試作しています。

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これも3Dプリントされた試作品なのですが、シリコンを等量混ぜて自動的にノズルから出てくる・・・みたいなカートリッジ。

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専用のガンに取り付けてハンドルをにぎにぎすると、ノズルから均等に練和されたシリコンが出てきます。

これだと気泡が入らないので便利ですね。

これを使って3Dプリントで作った型にインジェクトしてるところです。

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その次に作り出したのがこれ、電動で押し出す方式になっているようです。

わたしの仕事に使えるように、と考えてもくれているので、時々こちらからも要望をだします。
もっと大量にシリコンを練れるように・・・とか。

わたしがエピテーゼとか作るときに横でじっと見ていることがあって、知らない間にシリコンを自分で扱い出すようになっています。

家に帰ると作業台の上に大量の試作品がぁ〜!

気泡が入るとかで、型をまたデザイン変更してプリントしてはインジェクト、という具合にやっているようです。

いままではシリコンを使うのはわたしだけだったので、手持ちのシリコンの在庫というのはうっすら頭の中にはいっていました。

ところがたまに入れ物を手に取ると、おもったより軽くなっていたり・・・

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こんなものとか、あと何かのケースを作って商売したりしている様子。

まさしく門前の小僧状態。

器用貧乏までは真似してほしくないですけどね・・・



 

こぞーのプロジェクト

うちの息子は授業がオンラインのため、自宅にいつもいます。

いろいろ考えては3Dを駆使してなにか作ったり・・・

ほぼ生活が昼夜逆転しているようで、夜中に一人でいろいろやっていますね。

今朝はまだ6時前だというのに、その息子に起こされました。

ここのところかかっていたプロジェクトのプロトタイプができたようで、その結果報告でした。 

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シリコンを練和した状態ででてくる器具。

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ノーマルの状態はこういう構成で、歯科で型どりなんかに使います。

以前から空のカートリッジがあればシリコンを詰めて使えるのに、と思っていました。

使い終わったカートリッジを洗浄して詰め替えることも考えたのですが、めんどくさいのと何より容量が小さすぎます。

息子もシリコンを注入してなにかを作っているようで、そのためにデザインして3Dプリントで試作品を作っていました。

わたしと違ってこういう工業デザイン的な方は息子の独壇場。

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このハンドルをニギニギするとシリコンが練和された状態で先からでてきます。
先っぽのノズルは使い捨てになりますが、シリコンの硬さや注入する型に応じてノズル先端のサイズも選べます。

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試しにわたしが作った型に注入してみましたが、問題なくほぼ完璧な仕上がり。

このカートリッジにさくらオリジナルシリコンを詰めて使えますね。

エピテーゼの色合わせもほぼシステムが出来上がりましたので、このカートリッジにいろんな基礎色のシリコンを詰めてシステムに組み入れることができます。

何より特別な機械がなくても気泡を入れずに練和することができるのは大きいですね。

製品化しますのでご期待ください。
 

国家試験対策だって

いつの間にかウチの息子もそろそろ大学卒業が近づいているそうな。

いちおう歯科医師になるための国家試験をうけないといけないのだけれど、フィリピンでは年2回実施されていた国家試験が昨年から保留のままらしい。

今年はどういうかたちにかでも実施される予定らしく、そろそろそういうはなしが
オンラインクラスの先生から聞こえてくる。

フィリピンの歯科医師国家試験は面白く、総義歯の実地試験は実際の患者さんを使って一連の工程をやるんだとか。

型どりから始まって、咬合の採得、人工歯を並べて試適してレジン重合前までやるんだったっけかな?

昨年から対面授業も実習も行われていないくらいなので、当然国家試験でも以前のような状態ではやられないらしく、患者の代わりに実習用模型で同じようなことをやる様子。

ただこの実習用模型は日本のメーカー製でかなり高価。

ここの製品のディーラーもフィリピンにはあるんだけれど、なかなかいい商売をしているみたい。

簡単な金属製の咬合器みたいなものに上下歯がない状態の模型がネジ止めされている。
模型表面は柔らかい素材で歯肉を模している。

息子が実習で使っているものにプラスティックの歯がついた模型があり、この模型も例の日本のメーカーのものらしい。

ネジ止めされた金属製の簡易咬合器も同じものがついている。

じゃあ、模型の部分だけ作ってこの咬合器を流用すればいけるんじゃね?と思い作ってみました。

土台というか骨に当たる部分は3Dプリントすればいいし、表面の歯肉はシリコンでいけるじゃないか。

骨の部分は問題なくプリントできて、シリコン用の型枠も3Dプリント。

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ネジで固定しておいてシリコン流し込めばそのまま肉になってくれるだろう。

・・・ということで試行錯誤もありましたができたのがこれ。

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解剖学的にも理想的な上下関係に固定できるように調整していますが、ここはやはりもともとの商売柄問題ないはず。

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これを人体に見立ててまず初回の型どりをするようなのですが、使う型どり材がコンパウンドだそうな。

今どき臨床でコンパウンド使う人いるんだろうか?と思いつつも、息子が練習でとったものを見るとこれはこれでいいんじゃね?という気になった。

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実際には買ったほうがいいじゃないかというくらいの労力がかかっているんだけれど、もったいないので息子はついでに同級生とかにも販売するつもりらしい。

 

シリコンの流動性

はたと思いついたことなので忘れないうちに書いておきます。
というレベルの話です。

ときどき、このシリコンはエピテーゼに使えるかという問い合わせが来るのですが、だいたい某巨大通販サイトのリンクとかと一緒にきます。

リンクを見ると型どり用のシリコンである場合がほとんど。

人体に対する安全性はとりあえずおいといて、物性でどういうシリコンがエピテーゼに適しているのかをすこし・・・

シリコンにはその重合方法によって付加重合型と縮重合型に分けられるようです。
このあたりの違いは眠たくなるのと、実はわたしもよくわかっていないので割愛いたします。

わたしの中での大まかな分類は、ベースとキャタリスト(AとB)の混合比によるものです。

ベース:キャタリスト 10:1or2のタイプか
A:B 1:1のものかです。

多分どっちかが付加重合で、そうでないほうが縮重合だったような気がします。(落語調)

重合システムはさておき、10:1がいいのか1:1がいいのかということでは、両方それぞれ長所があって、10:1のほうが色をつくるときには楽です。

10のベースだけ色を作ればあとはキャタリストを混ぜるだけです。

対して、1:1の方はA B 両方それぞれおなじ色を作らないといけません。

物性なんかはおいといて、わたしの場合色作りがちょっと面倒でもA:B 1:1のほうが好みです。

わたしにとっての一番のメリットは量らなくても目分量で混ぜる量がわかりやすいこと。

10:1とかだとやはりハカリで量らないと物性や重合時間にムラができそうです。

ある程度の量を練和するのならまだいいのですが、少量しか使わない場合に10:1を量るのはけっこう大変です。

ちゃんとハカリながら使わないと、最後の方でどっちかが余ったりします。

ハカリも小数点以下がはかれるものじゃないとだめですしね。

1:1のものだとスパチュラでちょいちょいと同じ量を少量ずつ取り出すのは楽です。

 混和比についてはこんなかんじですが、では型どり用のシリコンはエピテーゼに使えるのか?

よく送られてくるリンクをざっと見た感じではわたしには使いにくいとおもいます。

まず重合時間がながすぎるものが多いようです。
加熱重合できれば早くなるんだとおもいますが、やはり1時間ほどで型から外せるようなものが好みです。

あと一番の欠点に思うのが、型どり用のシリコンは流し込むことを前提にされているので流動性が良すぎること。

エピテーゼの場合は通常石膏などの型が上下に分割できて、その間にシリコンを詰めて型を閉じて重合させるような作り方をします。

あまり流動性が良すぎるとこの操作が非常にやりにくいのと、流動性が良い分混ぜ合わせたときの気泡の抜けはいいのですが、その代わり型を閉じたときに抜けきれていない気泡が一方に付着することになります。

シリコンを詰める段階で部分的に色を変えたシリコンを塗布してキャラクタライズすることがあります。
重合時間がながすぎたり流動性が良すぎるとこの作業も大変です。

シリコンの流動性をコントロールする添加剤もありますが、あまり入れすぎると物性が下がるとききましたしその前にめんどくさい。

というようなことがわたしの拙い経験から感じてることです。

日本のメーカーさんは世界に誇れるものを作っているところが多いし、シリコンもしかりだとおもいます。

でもエピテーゼというものがまだまだシェアが少ないため、その用途に使えるものがなかなか見つかりません。

もっとこの技術が認知されて、日本のメーカーさんが良いシリコンを作ってくれるようになることを祈ってます。

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業務連絡です。
ご注文いただいているオリジナルシリコンの発送は来週あたまの予定です。
今しばらくお待ち下さい。






顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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