やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

2022年04月

小耳症 耳のエピテーゼの接着

そういえばあまりこういう動画とかみたことないけど、多分必要とされているひとというか知りたい方は多いんじゃなかろうかと。


エピテーゼを装着する方法にはいくつかあって、たぶん一番多い装着法かなと思われる接着剤を使った装着。

これがどの程度強いのかとか、どれくらい付けたままでいられるのかとかよく聞かれます。

エピテーゼ用の接着剤にはいくつか種類があって、接着力が強いものは1日付けっぱなしでも大丈夫だったりします。

その代わりエピテーゼの薄い部分とか破れやすかったり、古い接着剤を綺麗に剥がすのに時間がかかったりします。

動画では今使っている接着力の強いものを使って、試しに自分の腕に貼り付けたものです。

たぶんこの接着力だと今流行り?のマスクも大丈夫ではないでしょうか。

メガネももちろん大丈夫ですね。

付けたまま1日大丈夫かというと、皮脂の状態とか汗のかきやすさなどなどいろんな条件があるため一概にはいえませんが、今までの経験からはほぼ大丈夫のようです。

ただ、剥がした後に皮膚側にも接着剤が残るのですが、これもなかなか取れません。

リムーバーを使ってもなんとなくスッキリせず、数日そのままにしていたらその部分に埃がついてだんだん汚れてきました。

インプラントアタッチメントなどを使ったものに比べて、装着時も取り外し時もいろいろ大変です。

ちょっとした参考になればと・・・

そうそう、接着剤も結構高価です。
 

猛獣の牙

今回は動物病院に型どりに行ってきました。

IMG_9007


事前にCTスキャンから3Dのモデルを作っていたので、ある程度の大きさはわかっていたのですが・・・

IMG_9365

3Dプリントしてみて、こんなにでかいんだっけ?と一抹の不安。

FullSizeRender

麻酔で寝てもらっている間に型どりして石膏を注いだのがこの模型。

あらためて見ると迫力のある牙ですね。
FullSizeRender


なぜかCTは左右逆になってるし・・・

さて、この猛獣はなんでしょう?

ヒント

IMG_9349

多分諸事情のため、牙までは再現しないのですが自分自身ちょっと興味があったので人間用の歯のシェードガイドを持っていきました。

意外に動物の歯の色って今まで意識してきませんでしたからね。

・・・結果、A2からA3の間くらいでした。
この色は標準的なアジア人種の歯の色で、どちらかというと白い方です。

なかなかこういう機会もなかったのでためになりました。

3Dプリントで感じた大きさもほぼそのままで、やはり頭もでかいしあらためて剥き出しになった牙を見ると迫力満点でした。

これに本気で襲われたら人間は簡単に殺されてしまいますね。

ヒント2

IMG_9354

歯科用の印象材で型どりしている場面です。

最後のヒントです

IMG_9331

型どりには人間用のトレーを使いました。
横幅はほぼそのままですが奥行きはさすがにこの2倍はないといけませんね。

今回は必要な部分はとれているのでいいのですけど。

奥に横たわってるのがその猛獣です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
正解はゴールデンレトリーバーという犬でした。

愛らしくフレンドリーな犬として人気ですよね。
麻酔で眠ってもらう前に待合室でしばらく遊んだのですが、やはりかわいい。

診察室に入れられて治療台にのせられた時のものすごい不安な表情とか。
さすがに大型犬は表情も豊か。

そんな愛らしいゴールデンですが牙をみると結構な迫力。

大型犬をお飼いの皆様は、どうかストレス与えないようにしてくださいね。

治療室の足元には可愛らしいチワワが徘徊していました。
小型犬の代表みたいな犬ですけど、近寄って構おうとしたらものすごい勢いで吠えられるし。
このレベルでも喧嘩したらかなう気がしませんでした。

IMG_9340

このクリニックには他にもイグアナとかハリネズミも治療を受けていて、この🦜も患者さん。
まだ幼鳥のようでしたが人懐っこく、指をぺろぺろぺろぺろ犬みたいに舐められました。





 

小耳症 耳のエピテーゼ あたらしい可能性

インスタとかYoutubeにときどき症例なんかの写真や動画をあげてるせいで、外国からもエピテーゼの製作依頼がきます。


もちろん遠隔ではかなり制限がありますので、だいたいがお断りしています。
まず型どりと色合わせは大きな障害ですね。

写真を撮って送ってくれるのですが、それだけでは色合わせも完全にはできないし、やはり型どりできないことには形のとりようがなくて・・・

ある程度方向を変えて写真を撮ってもらえれば、なんとかなりそうな気もしてるのですがいまいち確実ではないし。 

 そんな外国の依頼があってふと思いついたのですが、小耳症の場合小耳側に聴覚の器官や機能が内部にあるかどうかの検査を受けてる方が多いみたいです。

その場合CTスキャンとかMRI?を使うようですが、CTスキャンのデータは型どりの代わりになり得るかも・・・・と思いつきました。

普段歯科の仕事ではインプラントをどこに立てるかとか、骨の厚みや神経の位置をCTスキャンのデータで確認します。

それ以外にも外科の先生からの依頼で、CTのデータから頭蓋骨などの模型を3Dプリントで作ります。

その応用で耳もCTスキャンのデータがあれば型どりが要らなくなるのでは?これって遠隔地の患者さんに有用かも。

 ここ数日熱心に問い合わせしてくれていたトルコの方がいらして、小耳の部分にエピテーゼを作ってくれといわれていました。

最初は現地で技術者を探してくれと伝えていたのですが

「自分の調べた限りではいない 」

「3Dスキャンしてくれるところを探している」

などなどのやりとりをしていて、ふと思いついて聞いてみました。

「CTスキャンは撮ったことありますか」と聞けば

「何回か撮った」と

「もしそのデータを持っているか、もしくは担当の医者にもらうことができるか?」と聞けば

「たくさん持ってる」だそうな。

なんでたくさん?と思いながらも、試しにその中のこれこれこういう形式のファイルがあって、それをフォルダごと送ることはできるか聞いたら

「やってみる」ということで送ってもらったデータから3Dに変換したものがこれ

IMG_9320

結構きれいなCTのデータでした。

これだけきれいだと型どりの代わりに十分なります。
デジタルインプレッションというやつですね。

IMG_9318

正常側と

IMG_9317

小耳側

下が微妙にトリミングされていますがじゅうぶん使える範囲です。

とくにデジタルインプレッションだと、型どりの材料による変形などがない状態でとれているし、気泡や欠損もありません。

これは使えそう。

あとは色合わせの問題をどうクリアするか・・・・・・

 

耳のエピテーゼ装着の動画 小耳症

エピテーゼの色合わせとか、製作工程の写真は時々撮るのですが、肝心の装着したところとかはなかなかないんですよね。

自分でやりながら撮れないところなので、このあたりは誰かに撮ってもらわないことには なかなか。

FullSizeRender

多分エピテーゼを考えられている方にとっては、装着した時にどれくらい違和感があるのか、自然感があるのかということの方が気になるのではと思います。

今回はまぐれ当たりで出来が良かったのと、わが優秀な助手の嫁さんのスマホが新しくなったので、装着時の動画を撮ることができました。


インスタ経由だとショート動画をリンクできるのを発見したので今回もそのノリです。

装着したあと結構満足いただいた症例ですが、このあと家に帰ってからテキストメッセージが来て、
はずした後の管理や処理で色々質問されました。

なかなか言葉で説明するのが難しかったので、この辺りも短い動画を撮りました。

接着剤でつけるエピテーゼの面倒なところとかもお分かりいただけるかもですので、こちらも後日動画を貼ってみようかな。

 

ノーステインとマジックマージン

今回は備忘録です。

たぶんいまのところこれ以上改良の余地がないのでは?というところで耳が完成したのでその記録です。

毎回もう改良の余地はなかろうとおもいながら、作るたびに色々思いつくのでまだまだ余地はあるんだと思いますが・・・

IMG_9045


前回の写真撮影のケースです。
シリコン片の色が写真に撮ると違って写るという問題はまだ解決できていません。

それでもとりあえず近い色のシリコン片があれば、なんとかいけまっせという今回の内容。

FullSizeRender

写真4個の耳ですが、左から2個目が初回のシェードテイキングで決めたシリコン片の色を元に、とりあえず型に詰めてみたものです。

IMG_9093

大体この程度まで色が合います。
このプロトタイプの耳にステインして最終の色に近づけます。

この辺りが患者さんとの面談2回目の時に行う作業です。

左から2個目の耳はそのステインが終わった状態で、一応この耳の色がターゲットになります。

この時のプロトタイプにはいつもと違うシリコンを使いました。
というのは、新しく調合したシリコンがなぜか重合に時間がかかりすぎて・・・

患者さんとのアポイントの時間が迫っていたので、とりあえず確実に速く重合するシリコンで間に合わせました。

そのため再度、最終のエピテーゼ用にシリコンを調合したのですが、少し色が浅くなってしまいました。

そのシリコンで新しく型に詰めて作ったのが左右両端の2個の耳です。

この程度若干明るくしておいて、最終のステインで色合わせしても良かったのですが、今回はさらに基礎色を追い込みました。・・・というのはステインが面倒なせい?

そのシリコンで作った耳が左から3個目の耳です。

左のステインしたものより若干濃くできてしまいましたね。
やりすぎたかなと思いながらも、前回のステイン時にはもう少し色を足してもいいなと感じていたので、多分これでかなりいけるんじゃね?という判断。

これだと最終のステインする余地はほとんどないですね。
いわば背水の陣・・・

耳の盛り上がったりしているところや、ヘリの白っぽくなっている部分は白のファイバーを練り込んで詰めました。

深い部分と色の濃い部分は赤のファイバーで表現。

FullSizeRender

型から外して余分なところを切り取っている写真です。

プロトタイプと比較しても、多分イメージ通りのはずと思いながら、こんなに濃かったっけ?という一抹の不安も・・・

結局そのまま外部ステインはまったく行わずコーティングをしました。

FullSizeRender

耳本体は柔らかさを出すために2種類の硬さの違うシリコンをブレンドして作り出しています。

さらに今回はコーティングシリコンを変えて、いつものやつより硬いものを使いました。
これは表面と辺縁の強度を確保するのに有利だろうと試してみたことです。

合計3種類のシリコンを使っているという、外からはわからない地味な努力が含まれています。

事前にテストしとけよというツッコミを自分で入れながら、本番で試すのはいつものこと。

やはり外部ステインをしないとムラが出ないのでより自然な気がします。

ステインに時間をかければムラもできないんでしょうけど、常々この内部からの発色にこだわっているものですから。

IMG_9169

もう一つ新しい試みは辺縁の透明性を上げること。

装着用の接着剤を強力なものにかえたこともあり、最近は辺縁をなるべく伸ばさないデザインにしています。

そのため下の皮膚の色と馴染を良くするためにも、辺縁は透明にしたいところでした。

ただ、シリコン全体の透明感を上げてしまうと耳本体も暗い色になって不自然です。

これは別のひらめきがあり今回試してみました。

自分の汚い手に乗せてみたところですが、辺縁は馴染んでくれそうな気配です。

・・・というようなすったもんだの末、出来上がった耳のお渡しが今日。

FullSizeRender

深い部分はもう少し濃くしてもいいような気がしましたが、これだけあってればもう余計なことをする必要もなかろう・・・

IMG_9173

辺縁も馴染んでくれそうです。

IMG_9174

接着剤で装着した写真です。
やはり穴の部分が気にならんこともないですが、実際にはほぼほぼ気にならないレベルで仕上がったと思います。

耳の形は最近ほとんど3Dですので、ほとんどツッコミどころはなく自然な形になってるはず?


シリコンの基礎色を作るところから型に詰めるところまで、今回は動画も撮ってみました。

めんどくさいので編集はせずに、インスタ用に軽く表示できるよう速度だけ速くしています。
この動画はこのブログからみれるのか?

見れるようでしたら、続きもぼちぼち載せてみようかな。



 
顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
ギャラリー
  • ツァイスのレンズ
  • ツァイスのレンズ
  • ツァイスのレンズ
  • 先丸平筆の呪い
  • 先丸平筆の呪い
  • 先丸平筆の呪い
  • なまっぽい耳 70年来の夢
  • なまっぽい耳 70年来の夢
  • なまっぽい耳 70年来の夢
著者ページ
著者近影

村井 さむ

著者ページ

日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

材料道具その他もろもろ
記事検索
LINE読者登録QRコード
LINE読者登録QRコード
最新コメント
楽天市場
  • ライブドアブログ