やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

2021年10月

金の入れ歯

今日はエピテーゼというか入れ歯のはなしです。

入れ歯もエピテーゼの一種だと思うのですがどうなんでしょう?

ときどき鼻のエピテーゼや眼窩のエピテーゼと付随して、顎義歯や義歯も作る必要がありますよね。

顔貌回復の目的でエピテーゼを求めてこられる方たちは、入れ歯は二の次だったりします。

でも歯の欠損や骨の欠損も回復しないとエピテーゼもちゃんとできないので、まず入れ歯の重要性からはなさないといけないことが多くあります。

・・・・ということが今日の話題じゃないのですが・・・・

3Dデザインの話をまだ引きずっています。

金属の3Dプリントをいま考えていまして、結構自分の中では興奮しています。

とりあえずテストプリントするためのサンプルとして、久しぶりに金属床のデザインをしてみました。 

ラボに歯科用のCADCAMシステムがあるのですが、義歯をデザインするモジュールは入っていません。

確かこのモジュールだけでスウジュウマン円するはず。

もちろん使ったことはあるのですが、いつものMeshmixerでできるやろ。

そんなのりでデザインしてみました。

Screen Shot 2021-10-26 at 10.38.58 PM

もちろんプリント用にフレームの部分は独立しています。

Screen Shot 2021-10-27 at 9.34.27 AM

ついでにソフトで色を変えて金の入れ歯にしました。

いま貴金属の価格が上がっているので、ほとんどいまは作ることもなくなりましたが、日本で仕事していた頃はときどき金の入れ歯もつくっていました。

デジタルならそんな色を変えるのも簡単ですね。

後日このデータからプリントしたものを紹介できるかな?

純チタンでプリントの予定。
いままでの鋳造と違ってミスキャスト、いわゆるナメられの心配がないのでわざと補強も入れずギリギリまで薄くしています。

たぶん純チタンでこのデザインだとたわむはず・・・・

その他にもいくつかテストピースをプリントしますので出来上がりが楽しみ。

義眼用のクリアボタンを作る型も言い訳のように含めています。

チタンの熱伝導性は、型の場合いいのか悪いのかちょっと想像できませんがこれも楽しみです。

Screen Shot 2021-10-27 at 10.24.54 AM

ついでに歯が別体になっているモデルにバーチャルで適合させてみました。

Screen Shot 2021-10-27 at 10.25.03 AM

人工歯も並べます。

Screen Shot 2021-10-27 at 10.25.23 AM

Screen Shot 2021-10-27 at 10.25.31 AM

実際の入れ歯もこういうふうにヒョイヒョイできればいいんですけどね。

 

3Dデザイン

ほぼあたらしい趣味にといってもいいかも。

会社で暇ができたら内職か3Dデザインをしています。

某サイトで3Dデータを販売しているのですが、いつの間にかそれなりに・・・

データ販売なら一回アップロードしておけばあとは世話なし、と当初は目論んでいましたがそうはなかなかいかないものですね。

データの形式を変換してとか、ならまだそれほど手間もかかりませんが、こういうものはできないかという要望が結構多くて。

やはり歯科関係が多いのですが、たぶんわたしのデータをもとによその国で製品化されているのかもしれません。

 おもに使っているCADソフトはメッシュミキサーとFusion360です。

メッシュミキサーは歯とかのような形のものに向いているため、かなり使い込んで来ました。

Fusion360のほうは工業デザイン的なものに向いているとおもっています、が、たぶんまだまだ奥は深いようですのでわたしはまだコメントできるほどじゃないですね。

パレットのデザインとかはほぼ全部Fusion360です。

Screen Shot 2021-10-21 at 9.36.50 AM

これはメッシュミキサーで最近デザインしたものです。
ベースとなる歯のデザインはすでに作っていたのですが、その後根管の神経まで再現してくれというリクエストで2種類のバージョンに増えてました。

今度はインドの会社からのリクエストで、歯冠と歯根で別々にプリントできるデータにしてくれという要望。

歯頸線で分割するのをどうすればいいかしばらく悩んで、ようやく終わりました。

販売サイトでパット見わかりやすくするためにスクリーンショット撮ったのが上の写真です。

Screen Shot 2021-10-21 at 9.10.45 AM

こんな具合に中はなってるはず・・・・・

FullSizeRender

透明レジンでプリントして、神経の部分にはピンクのコンポジットを詰めてみました。

 オンラインクラスが増えているため、歯学部もこういうので実習のかわりにしたりするらしい。

3Dデザインやってるうちはボケる気がしない・・・





CT スキャンの裏側

今回もエピテーゼには関係ありそうで、関係ない話です。

悲しい話ですが、こういう気持ちも残しておこうという自分のための備忘録です。

 もともと歯科の仕事がメインでしたけど、日本で仕事していた頃よく夜の街でお得意先の歯科の先生方とあうことがたびたび。

まあ、それだけ自分も夜の街に出ていたんだから偉そうなことはいえないんですけど、普段先生と呼ばれている方々がお乱れになってる姿はなかなか・・・・

 その頃、ナイフ職人とアウトドアショップもやっていましたが、そちらのお得意先に内科の先生がいらっしゃいました。

なんとなく同じ先生といえど雰囲気というか佇まいが違っていて・・・

時々依頼される仕事も、その頃はまだ携帯電話が普及していない頃でポケベル全盛の頃。
ポケベル用の革のケースを作ってくれ、といった仕事の依頼でした。

「革のケースに10円玉が数枚入るスペースも作って」と言われていました。

ポケベルが鳴ったら電話しないといけないんだけれど、そのときに小銭がないと困るからとのこと。

あー仕事柄そういうのは大事なんだな、とあらためて気付かされました。

 そういえば歯科では入院患者とか、歯の病気で救急車で運ばれてきたり死んだりというのはないよな・・・と。

そのあたりがやはり夜の街で乱れることができるか、そうじゃないかの違いなのかとおもいました。

もちろんお乱れになるような方ばかりでないことは重々わかっています。

・・・・・・・とここまでが今日のまくらです・・・長いですね。

 わたし自身の仕事もそんな人の生死に関わるような仕事ではないのですが・・・

最近CTスキャンのデータから3Dに起こしてとか、3Dプリントしてという依頼が増えてきて。

これまでもエピテーゼの症例でCTの断層写真を見ることはあったのですが、3Dデータに変換すると格段に生々しく再現されてしまいます。

骨のデータはもちろんですが、軟組織から皮膚まで再現できてしまいます。

 よくデータ変換とプリントの依頼をしてくれる先生が小児外科の先生です。
必然、依頼のデータも子供の患者さんが多くて・・・

Screen Shot 2021-10-22 at 3.50.56 PM

これは変換してるときの写真ですが矢状面、水平面、前額面の断層と、変換後に出力される画像が右下に表示されています。

この変換のときにどこまでデータ化するかで患者さんの骨格から顔貌まで見えてしまいます。

写真の症例は手術の計画に使うため頭蓋骨をプリントしてくれという依頼でした。

変換して編集していざプリントするときに、どうもサイズが小さいと感じました。

CTに付属するプロファイルを見ると患者さんの年齢が4と出ていたので、4歳児の頭蓋骨にしては小さいなとおもい先生に確認。

「先生、サイズが縮小されているように思うんですけど、CTの設定が変わってませんか?」ときくと

「いや、普段と同じ設定のはず」

「4歳にしては小さすぎるとおもったもので・・・」

「あーそれは4歳じゃなくて4ヶ月の赤ちゃん」

詳細な写真はここではお見せできませんが、額にもう一個頭がついているような大きな腫瘍ができています。

もちろん頭蓋骨も正常な形ではありません。

IMG_7257

これがプリントが終わった頭蓋骨です。
「頭蓋骨の中の状態も見たいから、額のところで分割しておいて」これはいつもの注文です。

わたしは医者ではありませんが、正常な頭蓋骨がどういう感じかくらいはわかります。
 このあかちゃんの場合もう一見して正常じゃないですよね。

このあとの治療がどうなるのか、どういう状況なのかまではわかりませんが、大変であろうことは想像できます。


くだんの先生からプリントの依頼があったのは昼過ぎですが
「今晩また頭蓋骨プリントできるかしら?」といういいかたは、急ぎで必要なんだろう。

急いで変換、編集してプリントし始めたものの、なんとなく大きさがこれでいいのか?
とおもって確認したのが上の会話でした。

素人の余計な口出しとはわかっていながらも、つい
「先生、このあかちゃん助けてやってね」とお願いしました。

「前回プリントしてもらったあのこは残念ながら助けてあげれなかった・・・」と先生の返事。

前回のケースは4歳の女児でした・・・・


 なんか最近CTデータから3Dへの変換とプリントもやってます、みたいなことでインスタやフェイスブックに上げたりしていましたが、そんな仕事の裏には数々の出来事があるんだなと暗い気持ちになりました。


 プリントが終わった手のひらに収まるような変形した頭蓋骨のモデルでしたが、祈りながらパッキングして夜のうちにバイク便で配達してもらいました。







 

マンゴーつづき

今回もエピテーゼには関係のないはなしです。

・・・・あくまでも自分の備忘録なのですが、それなりに見に来てくださる方が増えているのでおことわりしておかないと。

仕事はちゃんとしておりますので大丈夫です。
またエピテーゼのことも書いていきます。

 先日からの矢立パレットは、結局バージョン4まで修正をかさねていちおう完成というところまでいきました。 

蓋に磁石もつけたらちゃんとパコッパコッと感じよく閉まるようになり、ちょっと気を良くしています。

 
筆も直径9mmのものが各種はいるのでいいのですが、最近のお気に入りダビンチのポケットブラシにはちょっと長さが余ります。

ついでのことならこの筆専用のパレットも作ってしまえと・・・
さらにインディアンマンゴーの形ももう少し煮詰めて・・・・

一体何のためにこんなパレットばっかり作っているんだろうと思うときがありますが、Fusion360というCADソフトがなかなかおもしろくなってきて。

Meshmixerとはまた違った面白さを発見してます。

Screen Shot 2021-10-18 at 10.42.55 PM

新しいパレットがこれです。

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このイメージにさらに近づいたのでは?とおもっていますが、この形に拘ったのにはもう一つ理由があって。


前のパレットはどっちが蓋か本体か、開けるときにすぐにわからないんですね 。

このクビレを入れたことでその問題は解決されました。

FullSizeRender

上から見たところです。
ちょうど一般的なマンゴーの形とインディアンマンゴーの形になりました。

FullSizeRender

筆の長さに合わせてるのでこれだけ短くコンパクトになりました。
そのかわり使える筆が限定されてしまいますね。

IMG_7213

あとはたぶんいつものことながら、ここまで作って満足してほったらかしになるはず・・・

 

矢立とマンゴーの融合

自称パレットデザイナーです。

最近夢中になって作っているのが日本の矢立をモチーフにしたパレット。

矢立ときいてどんなものかイメージできますでしょうか?

なんか水戸黄門とか時代劇でちらっと見たのか、ずっと頭に残っています。

携帯式の筆記具みたいなもので、筆入れと墨つぼのセット、もしくは一体になったものですね。

出先で字を書く必要があるときに、墨壺に少し水を含ませてサラサラと書くイメージでしょうか。

これをあちこちの出先で仕事する自分のスタイルに応用したい。

いままでもミント缶に入るステインパレットとか作ってきましたが、どうもあの矢立のイメージでなんとか作ってみたくて・・・

 普段の仕事ではCADソフトにMeshmixerをつかっていますが、こういうパレットのような工業デザイン的なものには少し向かない。

別にFusio360というソフトがあるのでこれをちまちま勉強しながらやっています。

これが頭の体操にもなります。たぶん自分はボケないんじゃないか?と妙な自信も湧いてきたり。

Screen Shot 2021-10-12 at 11.13.06 AM
これがそのFusion360でのデザインが終わったところ。

FullSizeRender

3Dプリントしては改良し、現在バージョン3です。

たぶん3でほぼ完成な気がしています。

ところでこの矢立パレットにもう一つ盛り込みたいものがあって・・・

IMG_7120

我が家の車を停めている駐車場にマンゴーの木があるのですが、風の強い日などは小さなまだ育ちきっていないマンゴーがよく落ちています。

このあたりさすがフィリピンですよね。

日本で見かけるマンゴーはほぼきれいな楕円ですが、このマンゴーはインディアンマンゴーというらしくご覧のように少し勾玉っぽい形をしています。

このコロンとした形が好きで・・・自然の美がありますよね。

かねてからこの可愛らしい形をなにかに応用したいなと。

くだんの矢立パレットに織り込んでみました。

・・・どこに織り込んでいるのかというと・・・

IMG_7153

側面の形に織り込んだつもり・・・・

FullSizeRender

こちらは試作品、左から1号2号3号。
それぞれの試作品、一番の違いはヒンジのデザインと材質です。

あとあと作りやすさと歩留まりの良さを考えて改良していったのですが・・・・
そんな量産するつもりなのかよ?といわれそうですね。

そんなことよりもヒンジの大きさと本体との接続部の形にやたらこだわったのも、このマンゴーの形のイメージに近づけたかったから。

試作品1号は2.3mmの金属の棒をヒンジに使っています。
これは仕事で使うマイクロモーターに使うバーの軸径。
マイクロモーターで穴を開けてそのまま古いバーを差し込めば一石二鳥との目論見。

ただこれだと後でバーが錆びる可能性が大。

そこで矯正歯科に使う不銹鋼のワイヤーを使おうかと試作品2号。
使ったワイヤーが1mmですが、これだとプリントして穴がふさがってしまいやすいし、開け直すのが大変。

マンゴーのヘタの部分が弱くなって、イメージが遠のいてしまうし・・・

結局3号はプリント用のフィラメントをそのまま使うタイプに変更。

長さを調整して穴あけもしやすくしました。

IMG_7157
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結果、全体の精度も良くなってスッキリ軽くもなりました。

IMG_7158

ほぼデザイン通りに出来上がったはず。

IMG_7159

精度良く仕上げるためには適度なアソビが必要ですね。

あまりきっちり追い込んでしまうと組み立てが大変だったり、筆の出し入れに抵抗があったり。

うーん、CADデザイン楽しすぎる。
 
顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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