やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

2021年03月

口蓋裂のいぬ

だいぶ前に確かこの症例は書いたような気がするのですが、2年ぶりに再開した口蓋裂の犬ちゃん。


今回で3回目になります。


口蓋裂の動物の場合、普通は生まれてきても母乳をよく飲むことが出来ず、死んでしまう場合が多いのだとか。


この犬はそういう意味では結構まれなケースなのかもしれません。


ただ最初にあったときには青っ鼻たらしてるし、毛はまばらにしか生えてなくてガリガリに痩せてました。

チャウチャウなんだといわれても信じられませんでした。


わたしにとってもはじめての犬の口蓋裂で、型どりはシリコンパテを使って麻酔で眠ってるときに行いました。


口蓋に縦に空いた亀裂のような穴、型どり前に見ると食べ物がびっしり詰まっています。

キレイに洗浄して型どり。


後日シリコンで作ったオブチュレーターというフタのようなものを装着。

はじめての装着には再度麻酔で眠ってもらいましたが、毎日使うものだけに装着と取り外しのたびに麻酔かけるわけにはいきません。


口蓋の穴の形を利用してうまく固定され、なおかつ取り外しも素早くできるようにとデザインしました。


最初に会った当時はまだ子犬が少し大きくなった程度でしたが、それから約2年後再会。


やはり成長に伴って穴も大きくなっているための作り直しでした。


このときはすでに3Dを導入していたときでしたので、人間の歯科で使うような型どり用のトレーをデザインして3Dプリント。


初回のときよりも格段に型どりがしやすくなりました。


その2回目から更に2年、今回で3度めの再会、犬ちゃんもすでに5歳になっています。


オブチュレーターで口蓋の穴を塞ぐと、やはりものが食べやすく嚥下もしやすくなるらしく、前回の装着後しばらくしてからの経過観察では毛並みも肉付きも見違えるように良くなってました。


今回で3回目ですが、チャウチャウという犬種だけに毛がモコモコしてるので目立ちませんが、体を触ってみるとかなりガリガリに痩せています。


鼻水は両方の鼻の穴からダダ漏れ状態。


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体格的には2年前とそう変わっていないように見えるのですが、口の中を見ると口蓋の穴は以前より大きく横に広がっています。


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大きく広がっているぶん食べ物が詰まったままというのは少なくなっているようですが、かわりに鼻水は常時盛大に流れています。


最初は鼻水と思っていたのですが、口の中の唾液がでてきているんですね。


さすがに3度目ですのでこちらも用意は周到。

型どり用のトレーも口蓋部だけで用は足りることにきづき、今回はミニマムなトレーでした。


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トレーの持ちてのところが邪魔でしたので、ニッパーで切り取って印象。


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今回はシリコンの硬さを変えて2種類、予備を含めて合計5個作りました。


FullSizeRender


できれば麻酔無しで装着してみたかったのですが、やはり自分の犬ではないので気性がわからない。前回麻酔無しで挑戦した獣医さんは噛まれてたし・・・。


犬ちゃんにはかわいそうですがまた麻酔をかけてもらいました。


事前の準備に時間がかかった割には装着はほぼ一瞬ですんだので、なんとなく気が引けました。


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オブチュレーターを装着してしまえば、あたり前のことながら鼻水は止まってしまいます。


それだけでも周りには劇的な変化に見られてしまうのもどうなのか・・・



麻酔から覚めて待合室にでてきた犬ちゃんは鼻水もキレイに止まり、なんとなく清々しく見えるのは気のせいでしょうか。これでまた肉付きが良くなってくれればいいのですが。


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赤ちゃんの耳 その後

昨年ごろからずっと構想を温め実験してきた事があるのですが、そろそろ目鼻がついてきたのですこしだけお披露目。


 このブログにこられる方の検索ワード第一位が「赤ちゃんの耳」なんですね。

これはちょっと前にも書いたと思うのですが、やはりお母さんの悩みが伝わってくるようで・・・


その構想のメインテーマは、そういった小耳症などでお悩みのかたの一つの選択肢になり得るのではとおもいます。


おさらいになりますが、まず、いままでの状況で問題点は・・・


1.エピテーゼはどこで作ってもらえるのだろう?

2.費用は?

3.どれくらいの頻度で作り変えるのか?

4.子供の成長でサイズが変わったら?


細かいこともまだまだありますが、大まかなところではこんな感じなのでは?


日本でのエピテーゼの料金は耳でも10万円以上するところが多いのではないでしょうか?

製作してくれるところもまだまだ多いとはいえないとおもいます。


この費用と技術者の少なさが問題点3,4にも関わってくるんだとおもいます。


なかなか気軽に注文できるような金額でもないとおもいますし、近くに技術者がいない場合はさらに敷居が高くなってしまいますよね。


エピテーゼ自体の耐久性、耐用年数のようなものもありますし、ましてや小さい子供さんの場合はサイズが成長に伴って変わってしまいます。

ちなみに9大体12歳位でほぼ大人のサイズに近くなり、変化が少なくなるらしいです。


こういうよもやまのことにモヤモヤしながら、お母さんたちの悩みにこたえてあげたくても難しい状況がずっと続いてきました。


 ひとつの考えがひらめいたのはだいぶあとになってからのことです。


ある時テレビの取材がきたのですが、そのときにサンプルとして見せるために、出来た耳とかのエピテーゼをいくつか用意していました。

取材の人たちはその時、事故で片耳をなくしてしまった方をいっしょにつれてこられました。


テレビカメラを前に色々説明させられたのですが、このときだんだんはなしがずれていくのに気づきました。


「あーそうか、一般的な認識はこーなのかー」とおもったのは、


エピテーゼはお店にいって、並んでいるエピテーゼの中から一番近いものを選んで購入し、着けて帰る・・・


テーブルの上に用意しておいた数々のエピテーゼサンプルたちをみて、そう思われていたんですね。


そのあたりの誤解を改めて解きつつ、エピテーゼの製作には面談から始まって、型どりしてその次ワックスで試適して・・・

のなどなど説明いたしました。


もちろん料金も説明したのですが、最初は期待に目を輝かせていた、同伴の事故で片耳を失った男性もだんだんと表情が変わっていきました。


まず料金的に大きくかけ離れていたのだろうとおもいます。


その男性以外にも、エピテーゼを必要として問い合わせをしてこられる方は多いのですが、費用の面で断念される方を数限りなく見てきました。


フィリピンということもあり、日本などでの料金よりかなり抑えているのですが、それでも予算とは大きくかけ離れている様子で落胆する方も多く見てきました。


このあたりのモヤモヤをなんとか出来ないものかと考え続けていましたが、いままでの症例の経験値と3Dの技術を応用すればなんとなくできそうな気がしてきてました。


 もとは義眼をつくるのが好きで始めたこのブログですが、なぜか耳の症例をかなりの数こなしています。


その経験値と3Dデータベースがどうやら役に立ちそう。


大まかな方法はこんな感じ・・・


1.遠隔地の方にでも対応できるように、写真と計測キットを使ってエピテーゼの採寸、採色をおこなう。

2.計測キットをもとに3Dデータを調整し元形を作る。

3.製作工程と使用材料の見直しと改良で、工程をシステム化。


詳しいことはまだここでは明かせませんが、これによって改善される点が以下のとおりです。


1.面談無しでエピテーゼができるので遠隔地からでも対応可能。

2.原型が3Dデータで残るため、作り替え、成長に伴うサイズ変更が簡単。

3.製作法のシステム化と効率化でコストが抑えられる。


 また今日も前置きがながーくなりました。


いまわたしのいるフィリピンは、また鎖国といってもいいような状態になっています。

そんな中で日本とフィリピンで擬似的にこのシステムをためしてみました。


計測キットを日本の拠点からあるお母さんのもとに送り、それを使用してご自宅で採寸、採型してもらいました。

それをもとにわたしの方で3Dの原型データを作り、データで日本に転送。


そのデータを3Dプリントしてもらい、どれだけズレが出るかをチェック。

このテストをしたときのものが以下の写真です。


耳 1

計測キットの写真はまだ掲載できませんが、ごく簡単な仕組みですので、どなたでも簡単にできます。


Dプリントの時間は別として、原型のデータをつくるのは30分ほどで出来ました。

それをもとに日本側でプリントして実際にもとの耳と比較してもらったのがこの写真です。


なるべく現実的なところがわかるように計測は大体のことしかお伝えしていませんし、計測してくださったのは実際のお母さんです。


お母さんは工夫してヘッドバンドで髪の毛をまとめてくれました。

わたしの方ではそのヘッドバンドで耳が縦方向に変形されているものと思い込んで、その分を見越して原型を作ったのですが、ヘッドバンドは耳を押してはいなかったようでした。

耳 2


その分出来上がりの耳のカーブが若干違いますが、大まかな概形はあっているようです。

耳 3


もちろん実際にはこの耳が左右反転された形でできるわけですね。


形に関してはほぼ許容範囲ではないでしょうか?



このあとは実際にシリコンの耳に置き換えるのですが、色に関してはすでにブログで何度か記事にしましたとおり、基礎色のレベルでかなり近づけられます。


というわけで小耳症のケースでお悩みのお母さんに、実際にモニターになっていただこうかなと考えております。


ご希望の方いらっしゃいましたらご連絡ください。


ご希望多数の場合はメール等でやり取りの上、今回3名ほど選ばさせていただきたいとおもいます。


お蔵入り・・・

IMG_4443

ここのところしばらくハマっていた金型作り。
張り切ってレジンを詰めてみました。
あいにく透明のレジンがなかったので歯科で使う歯肉色のレジンを詰めてみました。

・・・結果、金型としてはお蔵入りさせることになりそうです・・・・

問題点を書き出すと長くなるのでやめますが、一番は外しにくい。

外す用の治具みたいなものを作ればいいんでしょうけど、実際クリアボタンをつくるのを目的とするには一度に数個作れるものにしたほうがやはり歩留まりも良くなりますね。

そうなるとやはり鋳造でつくるにはまた別のことを考えないといけません。

今回は3Dデザインから鋳造まで持っていけるということが発見できただけでも収穫でした。

世の技術進歩の裏でも、こういったジミーな努力がされているんでしょうね。

出来た金型どうすっか・・・・やはりペンダントトップ?


チタンマニア

あいかわらず内職の合間に仕事している状態です。

クリアボタンの金型を考えれば考えるほど、別の案がでてきてきりがない状態。

おもいついたら3Dデザインを修正してプリント、翌日ラボで鋳造と仕上げ、みたいなサイクルになってきつつあります。


IMG_4435

これで3代目になりますね。

全体の高さが低くなったので、クランプで余裕で挟めるようになりました。


IMG_4436

左の列が3代目、真ん中が2代目で孤立しているのが初代です。

3代目の一番の改良点はクリアボタンの平面部をキレイにすること。

IMG_4437

手前2個の部品がそれぞれクリアボタンの平面部にあたるところです。
右側の2代目のぶんは形状的にどうしてもキレイに研磨できませんでした。

そこで3代目は2パーツから成るようにしました。
薄いディスクを研摩してからその上の汽車の車輪みたいなのにはめ込みます。

これで研磨の部分は解決できましたが、余分な作業が加わりました。

たぶんこのあともうつくることはないだろうとおもい、せっかくなのでチタン合金で鋳造しました。


IMG_4438

3代目と2代目の高さの比較です。
2代目はクランプの開きに対してほぼギリギリなので、レジンを詰めた状態だとなかなか挟まらず慌ててしまいます。

3代目は余裕。


FullSizeRender

間違いなく使いにくいはずですが、その気になれば初代から3代目まで合体させることも可能。
でもこうやって使うことはないだろうな・・・・

写真の状態だとクリアボタン3個とブラックディスク2個同時に作れるはずなんですが・・・


今回はただ自分の備忘録でした。
見た目は変わらないのですが、初代から3代目までそれぞれ微妙に違う金属を使っていますので、たぶん備忘録を残しとかないと後でわからなくなるはず。

意外にこの金型に対する反響が大きかったのですが、商品化するつもりはありません。失礼!

3Dプリントで約2時間、鋳造と研磨で丸一日かかってしまいますので金額的に折り合いがつかなくなりますね。



技工士の手

内職の合間に本業をこなしているような気がするここ数日。いやいつもか・・・

金型の研磨をつづけてやっています。


IMG_4378

ちょっと硬い金属なのでなかなか削れないのと、すぐに熱くなるので水につけながらの作業。
指はふやけるし黒くなるし、なかなか技工士の手に戻ってます。


IMG_4380

研摩してるのはブラックディスクの平面に当たるところ、ちょっと深い傷があったのですが、なんとか消すことが出来ました。

右のパーツがクリアボタンの平面に当たる部分なので、キレイにしたいところですがこの形だと難しいですね。

デザイン変更する必要があるけれど、どうしたらいいかまだ思いつかない。

クリアボタンの重合が終わってからどっちみちサンドペーパーでひと擦りするところなので、これでもいいっちゃいいのですが、やはりもっときれいに作りたいところ。

課題です・・・・



IMG_4370

手持ちの一番小さいクランプに挟まる予定でしたが、微妙に厚みがおおきい。
写真では挟んでるのですが、スペーサーのパーツを1個外しています。


IMG_4381

意地になってクランプの方を削りました。


IMG_4382

カッティングディスク4枚重ねの刑でバリバリ削り、無事挟むことができるようになりました。

IMG_4383

アラビアコーヒーの缶がコーヒーの湯沸かしに昇格したので、この鍋を使っているのですが今度は大きすぎかも・・・



顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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