やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

2018年06月

トラベルブラシの活躍

今日は土曜日で会社は休みなのですが、トラブルシュートのため早朝から一人で出社。

久しぶりに歯科のポーセレン ワークをやりました。

陶材の粉を水で練り、それを金属やジルコニア製の冠に盛り上げて焼成します。

多くの技工士さんはこの時に筆をつかうのですが、わたしは金属製のスパチュラという小さいヘラ状のものを使います。

これは学校出てから最初に勤めた技工所のスタイルが刷り込まれただけで、そこの社長さん曰く
「筆を使うと筆しか使えないようになるし、そうすると使い慣れた筆がないと仕事できないようになる。スパチュラに慣れると似たようなものがあればとりあえず作業できるんでいいんだよ」という事だったと思います。

それでも細かい作業や修正には筆を使ったほうがやりやすいので、築盛用の筆より小さいものを使います。

築盛用の筆は専用のものだと、コリンスキーの毛を使ったもので数万円するものもあります。

絵筆でも高級な筆はコリンスキーが多いようで、穂先がシャープに尖るのと水の含みがどうたらこうたらという事らしい。

先日購入した都合3本のトラベルブラシを、絵も描かないくせに常にカバンに入れて持ち歩いています。

今日の作業にこのうち一番細いものを使ってみましたが、かなーり使いやすかったですね。

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わたしのブラシはグレードの低いものですので、コリンスキーの毛ではありませんが、やはり毛先がシャープにまとまるのが重要のようです。

ハンドルが中空とはいえ金属製ですので、普通の筆に比べると重いのですが、わたしに限っては震えなくていいですね。

シリコンのステインには毛が専用液で痛みそうなのであまりいい筆は使いませんが、虹彩にはこの筆良さそうです。

今更ながら歯科の仕事も筆にしようかな。


筆職人の呪い

多分前世で筆職人を殺めたかなにかじゃなかろうか・・・

絵心もないくせに何故か最近、筆に執心しています。

先日は偶然見つけたアートショップに、車ではるばる行ってトラベルブラシを買って来たのはすでにご紹介の通り。

2番と8番のサイズをその時は買いました。
2番は虹彩を描くのに使えるサイズかと、8番は色のサンプリングに良さげ。

8番はもう一つ使い道があって、歯科の仕事でポーセレンで歯、いわゆる差し歯を作るときにポーセレンの粉を水で練って盛り上げますが、そのときに使う筆にちょうど良さげな大きさです。

ただ最近は自分でそういう仕事はあまりしないので、いざというときのためですね。

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今回買ったのは上から2番めと4番目です。
例のアートショップからですが、今回はウェブショップを利用しました。
サイズ6番の中間のサイズと、コリンスキーの短い穂のもの。

店の内容は見て来ているので、あとは必要なものをネット上で選んで注文。

配達料が90ペソなので車で行くよりはだいぶ楽ですね。

日本の通販と違って到着までには3日ほどかかりました。

まあ、待つのも楽しみのうちと考えています。
以前のフィリピンと違って最近はこういった通販も利用しやすくなってきています。

一番上と3番めは店で買ったトラベルブラシの8番と2番です。

一番下は先日のデンタルショーで購入したポーセレン築盛用の筆です。

チャイナの業者でしたので、コリンスキーと書かれているのがホントかどうか疑わしかったのですが、値段の割にどうやら本物のようです。

肌の色見本をつくりながら使い比べましたが、このチャイナ製の筆が一番具合がいいような気がします。

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トラベルブラシはご覧のように収納できてもちはこびに便利ですが、ハンドルの方に重心があって慣れが必要です。

偽物のトラベルブラシはアルミ製でしたので、逆にこちらのほうが使うにはバランスがいいのが皮肉ですね。

だいたいフィリピンではこういった輸入製品は価格が高いのですが、見つけたアートショップは安い。

ちなみに日本のアマゾンでしらべたら5倍以上の値段で売っていました。





新学期の耳

ここのところ立て続けに耳の問い合わせがあり、それも4件すべて4歳児の患者さん。

普段はそういう年頃の患者さんはほとんどこないのに、なぜよりによって立て続けに4人?と思っていたら、フィリピンでは4歳から学校に通うようになるのだとか。

日本と同じで小学校は6歳くらいじゃなかったっけ?と思っていましたが、こちらでは特にプライベートの学校は詰め込み教育的なところがあり早くから結構なレベルの勉強をしているようです。

そういう学校は校則も厳しいところが多く、男子は刈り上げで耳が見えないといけないらしい。

小耳症の子供たちはだいたい髪を長くして目立たないようにしていたのが、この学校に行く時期になって髪を短くしないといけなくなり、それで耳のエピテーゼをと問い合わせしてくるということらしい。

耳の大きさ的に4歳ではまだ成人の大きさになっていないので、数年後にまた作り変えることになります。

やはり親御さんとしてはいじめを気にされるのですが、つけているエピテーゼが不自然だったり、また遊んでいるときにはずれると、もっとまずいことになるのでは?と逆にこちらとしては心配。

エピテーゼをなるべく長く使ってもらえるように、現在勧めて使ってもらっている接着剤はそれほど接着力が強くありません。

子供さんだと活動的だし汗もかきます、特にここは常夏の国。
そうすると今の接着剤でははずれるのではと心配します、かといって強力な接着剤を使うとエピテーゼがすぐに傷んでしまいます。

今日の患者さんはかなり遠くから家族でうちに来られました、そういう諸々の事情を説明して、気にしないように育てるのがいいのでは?と勧めましたが、それでもやはり作りたいと・・・・

私の子供が仮に同じように小耳症だったら、自分でエピテーゼを作れるとはいえ、子供には作らないようなきがします・・・

このあとさらに3人4歳児が控えてますので、同じ説明をしながらも、多分やはり作ることになるのでしょう。

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作るのは私の仕事ですのでいいのですが、このくらいの子供さんだと型取りが大変です。

何をされるのかわからない不安もあるせいで、本人にその気になってもらうまでかなりの時間がかかります。やっとその気になってくれてもじっとしていてくれない事が多いのでまた大変。

今日は左の耳が小耳の側、この部分はちゃんと型取りしたかったので、少し高価な材料ですがガンタイプのカートリッジから混ぜ合わさって出てくるシリコンタイプの型取り材を使いました。

正確にはこれは型取り材ではなく、歯のかみ合わせを記録するためのものです。
そのため硬化が早いので好都合、ただし硬化後は少しソリッドな状態になるのでちょっと取り外すのが時間をかけてゆっくりやらないといけません。

なんとか今回は泣きそうなところをなだめすかして取り外しました。

反対側はいつものアルジネートを使いましたが、いつもなら患者さんに横になってもらい、型枠をおいた上に柔らかめのアルジネートを流し込みます。

ところが今日の子は左側を採っただけでもう、じっとしてくれません。

流し込んだアルジネートが型枠から流れ出て悲惨なことになりそうな予感がしたので、眼球の埋没に使っている例のカップケーキの型にアルジネートを入れ、それを上からかぶせて採りました。

患者さんは横に寝た状態ではなく座った状態でしたので、一部アルジネートが入っていってませんが、これだけ採れれば良しとしましょう。

型取りのあとは水彩絵の具で色のサンプリング。
遠くから来られているので、なるべく回数が少なく済むように情報はできるだけ集めておきます。

色合わせにはスマホで使っているおすすめのアプリがあります。

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確か無料のアプリのはずです。

作った色見本と耳を並べて写真に写し、それをこのアプリで開くとカラーピッカーみたいなものがありますが、これがかなり使えます。

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写真の中に輪っかが5つ出てきますのでこれを指先でドラッグしてターゲットの部分に合わせます。
もう一個の輪っかを色見本に合わせると、その輪っかの中の色が上に並びますので、どの部分の色とあっているのか、どれくらい違うのかがわかります。

作った色見本さえ手元においておけば、あとでシリコンの色を調合するときに助かります。

特に若年代の皮膚の色は濁りがなく、スキッとした色ですので、シリコンの大元の色を追い込んでおかないと、表面のステインだけに頼るとムラができたり汚くなりがちです。

おためしあれ





手術室

久しぶりに手術室に入りました。

今度の新しい患者さんは鼻です。
前回病室で会ったときの患者さんは、腫瘍で鼻とその周辺の組織を切除したばかりで、少し先が見えにくい状態でした。

今回は額から皮膚を少し移動させて、なるべく粘膜むき出しの部分を覆う手術とのことでした。

手術は通常朝早くに始まりますが、多分手術後の経過を観察しやすいようにだと思います。

今回のエピテーゼは骨に金属の骨組みのようなものをネジ留めし、磁石アタッチメントでエピテーゼを固定する予定ですので、そのための型取りのため行ってきました。

決まった病院と契約とかしているわけではなく、いろいろと医者のつながりで紹介されたりするため、呼ばれる病院も様々です。

それぞれに病院の内容や雰囲気が違い興味深いことばかりですね。


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手術室に入ったのが朝8時位でしたが、すでにみんな揃って術部周辺の消毒を始めていました。

型取り材はカートリッジから混ぜ合わさった状態で出てくるものを用意していきましたが、それだけでは仰向けになった患者さんの鼻の穴から起動に流れ込んでしまう恐れがあるため、合わせてパテタイプのものも持っていきました。

どちらも完全に消毒滅菌ができないものですので、手術前に型を採らせてもらいました。

今回は歯科医師は含まれず皆さん医師だったようで、歯科では見慣れた存在の型取り材が結構珍しかったようです。

最初にパテをのせ、硬化後に一度取り外し表面に柔らかいタイプのものを塗りつけ患部に再度のせて型取りしました。

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最初の写真を見ていただければわかりますが、オレンジの部分があとから盛り付けた印象材です。

必要最低限だけ盛り付けたつもりですが、それでも結構鼻腔に入り込んでますね。

段々と学術的な雰囲気になってきましたが、苦情が出ない限りまたぼつぼつ経過をのせていきます。

できれば皮膚移植の手術も見学したかったのですが、このあとの予定が入っていたので後ろ髪引かれつつ病院をあとにしました。

この次は金属のフレームができてから骨にねじ込むときにまた参加することになります。





クリアボタン 金型の作り方 動画です


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ざっとクリアボタン金型の作り方を動画にしてみました。

15分ほどありますので退屈な部分は早送りでみてください。

一個作るのに所要時間を改めて確認したら30分ほどでできます。

よかったら試してください。

説明も何も入れていませんが先日の記事と照らし合わせていただければ大丈夫でしょう。

一番最後に先日説明しなかったパートが含まれますが、シリコンパテや練り消しゴムみたいなものを押し付けて、クリアボタンの形を確認しています。

改めて自分の手の汚さを再認識しました、お見苦しいところもありますがどうぞご容赦。

使ったマイクロモーターはこれです。
ハンドピースも含めグレードは低いほうです。
フットスイッチはついているのですが、On/Offのみで回転数の調整は本体のツマミでやらなければならない変なタイプです。

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これで必要な大きさはほとんど揃いましたが、実際には1個あれば私の仕事には間に合ってます。



顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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